写真1 米U3のケイト・パーマルCEO
写真1 米U3のケイト・パーマルCEO
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写真2 U3スマートドライブの操作画面 アプリケーションの起動,追加や削除などを行う。
写真2 U3スマートドライブの操作画面 アプリケーションの起動,追加や削除などを行う。
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 パソコンのデスクトップ環境を持ち歩く−−。米U3が「U3プラットフォーム」と呼ぶ独自の仕組みで,このようなことを狙っている。U3は,フラッシュ・メモリー大手の米エム・システムズと米サンディスクが2004年12月に共同で設立した合同会社(LLC)である。米国では同プラットフォームに対応したUSBメモリー「U3スマートドライブ」が2005年10月から提供されており,現在は17社のメーカーが50製品を販売している。日本での本格展開に向けて来日したケイト・パーマルCEO(最高経営責任者,写真1)に,U3スマートドライブのメリットや今後の戦略などを聞いた。(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション

−−U3スマートドライブを利用するメリットは。

 U3スマートドライブは,アプリケーションをパソコンにインストールせず,USBメモリーから起動できる仕組みを提供する。アプリケーションはメモリー上で動作し,ブックマークなどの設定情報もUSBメモリーで管理する。正確にはアプリケーションの実行時にパソコンのハード・ディスクに設定情報などを一時的に書き込むが,USBメモリーをパソコンから抜くと自動的に消去する。

 このような仕組みにより,ユーザーは自分のデスクトップ環境を持ち歩けるようになり,いつでもどこでも再現できる(写真2)。ホテルやインターネット・カフェなどのパソコンを利用すれば,出張時などにノート・パソコンを持ち歩かなくて済む。

 ただし,アプリケーションはU3スマートドライブに対応したものを利用する必要がある。アプリケーションは「U3ソフトウエアセントラル」と呼ぶ専用Webサイトからダウンロードできるようになっており,有料や無料のものを含め現在100種類以上ある。対応アプリケーションは毎月20~30種類のペースで増えている。

−−セキュリティ面で問題はないのか。

 U3スマートドライブに対応したセキュリティ・ソフトが提供されている。例えば「CryptoMnemo」というソフトを利用すれば,USBメモリーのデータを暗号化できる。USBメモリーを紛失しても情報が漏れる心配はない。U3に対応したアンチウイルス・ソフトもあり,企業でも十分利用できる。今でも,社員がデータを暗号化せずにUSBメモリーで持ち帰っている企業が少なくない。こうした企業がU3スマートドライブを利用すれば,セキュリティを確保しながら利便性を高めることが可能になる。

−−日本ではいつから利用できるようになるのか。

 ダウンロード・サイトのU3ソフトウェアセントラルは,既に日本語に対応している。欧米で販売されているU3スマートドライブを使えば,今すぐにでも利用できる。日本ではアイ・オー・データ機器とエレコムが6月からU3スマートドライブを販売するほか,サンディスクや東芝なども対応を予定している。

 日本語に対応したアプリケーションは現在22種類ある。主なものでは,IP電話ソフトの「Skype」,Webブラウザの「Mozilla Firefox」,メール・ソフトの「Mozilla Thunderbird」,オフィス・ソフトの「OpenOffice.org」など。このほか,「Outlook」や「Outlook Express」とメールのデータを同期するツールもある。

−−今後の戦略は。

 USBメモリーはこれまで,データを保存する用途に使っていたが,今後はデスクトップを持ち歩く使い方が中心になる。2008年末までには,あらゆるアプリケーションをU3スマートドライブで持ち歩けるようにしたい。

 USBメモリーの低価格化も進んでいる。昨年6月に200ドルだった1GバイトのUSBメモリーが,今は50ドル以下で販売されている。2008年末には,16GバイトのUSBメモリーが50ドルで販売されるようになるだろう。16Gバイトの容量があれば,あらゆるアプリケーションやデータを持ち歩ける。50ドルでパソコンの使い方が大きく変わるはずだ。

 対応プラットフォームも増やしていきたい。現在はWindows 2000/XPのパソコンしか対応していないが,他のOSでも利用できるようにする。PDAや携帯電話などUSB以外のデバイスにU3の技術を適用することも考えている。