写真1 松下が3月末にも米国向けに出荷を開始する新製品
写真1 松下が3月末にも米国向けに出荷を開始する新製品
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写真2 CeBIT 2006で開催したセミナーに登場した松下電器産業の有高明敏・ネットワーク開発センター長
写真2 CeBIT 2006で開催したセミナーに登場した松下電器産業の有高明敏・ネットワーク開発センター長
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写真3 CeBIT 2006で公開した「HD-PLC」の新ロゴ
写真3 CeBIT 2006で公開した「HD-PLC」の新ロゴ
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 松下電器産業は3月10日,ドイツ・ハノーバー市で開催中のIT展示会「CeBIT 2006」で技術セミナーを開催し,同社が3月末にも米国向けに出荷を開始する新製品の詳細を明らかにした。

 新製品は,イーサネットとPLCとの橋渡しをするアダプタ型のブリッジ製品で,通信速度は上り下りの合計で190Mビット/秒。価格は1個130ドル,2個セットで200ドルになる見通しだ(写真1)。

 セキュリティ面の配慮も施した。セットアップは,対向するPLCアダプタのボタンを両方押すだけで完了するが,両方のボタンを押すことで2台のPLCアダプタ間の通信が128ビットの「AES」(advanced encryption standard)で暗号化されるようになる。これで,他のPLCモデムを同一の電力線につないでも,接続できないようになるのだ。

 欧州への出荷は米国よりも後になるが,価格は同程度の見通し。今夏に利用が認められるようになる日本国内に向けた製品も,形状などは同じになる。国内での規制値に合わせて,製品内の回路は改良を加えるという。

 セミナーで講演を行った松下電器産業の有高明敏・ネットワーク開発センター長は,「当社は数多くのネット家電製品を提供しているが,製品ごとにネットワーク配線を準備しなければならないことが大きな問題」と,ネット家電がなかなか普及しない理由を説明(写真2)。「PLCなら新たな配線なしで利用できる」と,その利便性の高さを訴えた。またPLCの用途には,同社がたびたび公開しているHDTV(高精細テレビ)伝送といったディジタル家電間の接続だけでなく,「オフィスやホテル,学校などのLAN構築にも使える」とアピールした。

 また有高センター長は,残された課題として「PLCの標準がないこと」を挙げた。(1)アクセス回線としてのPLCと屋内ネットワークとしてのPLCが同一の電力線上に存在する場合,(2)方式の異なるPLC製品が同一の電力線上に存在する場合,に速度が低下したり通信ができなくなる問題があるという。

 松下では,これらの問題を解決するために,2005年6月に業界団体「CEPCA」(CE Powerline Communication Alliance)を設立している。CEPCAでは,異なるチップを採用している製品が互いに邪魔をせず共存するための仕様策定を行っている。異なるチップを採用した製品をユーザーが買った場合に,通信できなくなるような事態が起こることを避けるために,「いずれはCEPCAで共存できるかどうかの認定試験を実施し,共存が確認できた製品にはステッカーを張る」(有高センター長)方針だ。

 また,相互接続性の可否をユーザーに伝えるための独自の仕組み作りを進めていることも明らかにした。松下はCeBIT 2006で,「HD-PLC」という新しいロゴを公開(写真3)。松下製チップを内蔵した製品であれば,メーカーが異なっても相互接続性は確保できる。このことをユーザーに伝えるために,「当社のチップを採用している製品にはHD-PLCロゴのステッカーを張ってもらう」(有高センター長)という。

 実際,松下製のチップを使用しているデルタ電子のPLC内蔵ACアダプタは,このHD-PLCロゴとともに会場内に展示されていた(関連記事)。