写真1 東京海上日動リスクコンサルティングの情報グループ指田朝久グループリーダー
写真1 東京海上日動リスクコンサルティングの情報グループ指田朝久グループリーダー
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写真2 米国の危機管理対策の専門家コール・エマーソン氏 エマーソン氏は米国のBCP策定の技術者資格の認定団体Disaster Recovery Institute International(DRII)の理事長を務める。
写真2 米国の危機管理対策の専門家コール・エマーソン氏 エマーソン氏は米国のBCP策定の技術者資格の認定団体Disaster Recovery Institute International(DRII)の理事長を務める。
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 NTTコミュニケーションズは2月16日,企業の事業継続性計画(BCP)の策定を支援するためのセミナーを開催した。「自社の総合リスク管理:事業継続への備え」として,災害対策の専門家やユーザー企業,NTTグループの各企業が対策を紹介した。

 東京海上日動リスクコンサルティングの情報グループ指田朝久グループリーダーは「そもそも防災対策と事業継続性計画は何が違うのか」と切り出した(写真1)。「防災対策は人命救助や安全対策が中心で工場などの事業所単位。これに対して事業継続性計画はビジネスそのもの。いかにして重要業務を見極めて続けるのかという視点が重要だ。事業継続は企業の顧客や株主が評価するもので,策定は経営者の責務となっている」と聴衆に訴えた。

 米国や世界における事業継続性のトレンドを紹介したのは,米国の危機管理対策の専門家コール・エマーソン氏(写真2)。「企業の危機管理はおよそ30年前,コンピューターが動かないというリスクをどのように回避するか,といったことから始まっている。その後,さまざまな大事故を経て,新たな規制や法令が作られてきた。今では世界16カ国に災害対策の規制や危機管理の行動規範が存在している」と世界の動きを解説した。また,企業側の対策の一つとして「通行止めになる道路など,規制当局の災害時のルールをあらかじめ知っておくのが重要」とのトピックを紹介した。

 なお,基調講演には慶應義塾大学大学院経営管理研究科の大林厚臣助教授が登壇。「事故や災害はめったに起きるものではない。このため対策の効果が社内で理解されないし,社員の防災意識が持続しない」と指摘。「社内で改善可能な防災指標を掲げることや,防災計画を事業の年次計画に含めて対策を通常業務に織り込むことが必要だ。防災対策の担当者だけでなく全社で取り組むことが欠かせない」と述べ,企業体制の整備を訴えた。

 午後からはユーザー企業として神戸製鋼所が参加。経営企画部IT企画室の林高弘室長が阪神淡路大震災の経験談とその後の抜本対策を紹介する。また,NTTファシリティーズ,NTTドコモ,NTTデータ,NTTコミュニケーションズのNTTグループ各社がBCPをテーマにした対策を披露する。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション