竹中平蔵総務大臣直轄の私的懇談会「通信と放送の在り方に関する懇談会」が2月7日,第3回会合を開いた。懇談会後の会見で竹中大臣は「著作権問題には短期的な課題と長期的な課題がある」とコメント。短期的な課題として「電気通信役務利用放送に関連して,著作権法のあり方がこのままでいいのか議論した」(竹中大臣)。

 会見に同席した座長の松原聡東洋大学教授は,「著作権法上の放送の概念と,放送法上の著作権の概念がずれているのが問題。IPマルチキャストが通信扱いであることがコンテンツの流通をさまたげている」とした。さらに松原座長は,「政府の法解釈の違いの問題ならば,IPマルチキャストは放送だと解釈を変更すればいいのではないか。それで解決するなら早急にやるべきだ」と語った。

 竹中大臣が言及した電気通信役務利用放送とは,ぷららネットワークスが提供中の「4th MEDIA」やソフトバンクの「BBTV」といったIPマルチキャストを利用した放送サービスを指す。松原座長は,具体的な時期や方法については議論していないとするものの,電気通信役務利用放送が「放送」と位置付けられれば,コンテンツの権利処理の煩雑さなどが大幅に改善され,コンテンツ流通が活発になることが見込まれる。

 また長期的な著作権問題として,「今の著作権法がデジタル時代にふさわしいものかどうかという議論がある」(松原座長)とした。

 このほか今回の会合では,放送事業者がインフラからコンテンツまでを持つ垂直統合型モデルについても議論がなされた。「電波で流すことを原則にした放送局のハード・ソフト一致原則が,伝送路が電波だけでなくIPなど多様化することに対応できるのかを議論した」(松原座長)。この問題について構成員で一致した方向性を出すには至っておらず,議論を慎重に進める姿勢を見せた。

 懇談会は(1)融合時代の法体系,行政の在り方,(2)NHK改革,(3)NTTの組織や独占性を含めた通信の在り方,(4)放送業界全体の在り方を議論することになっており,残る(3)のテーマを次回の第4回会合で議論する予定だ。ひととおりの個別の議論を進めた後にヒアリングなどを実施するかどうかなど,具体的な進め方については未定である。

(山根 小雪=日経コミュニケーション