写真1 車にまたがって登場した米Googleの共同創設者であるLarry Page製品部門担当社長。
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写真2 ダッシュボードにあるハンバーガのアイコンを押したら…。
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写真3 店の場所を知らなくてもハンバーガが買える?・・・
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写真4 ドイツVolkswagenと共同研究を進めている自動車用「Google Earth」。
写真4 ドイツVolkswagenと共同研究を進めている自動車用「Google Earth」。
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写真5 携帯電話機用のGoogle Earthである「Local for mobile」のデモ。
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写真6 USBならアダプタの価格は安いと主張。
写真6 USBならアダプタの価格は安いと主張。
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写真7 Googleと人間の脳みそを統合するのが夢という。
写真7 Googleと人間の脳みそを統合するのが夢という。
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写真8 ステージに現れた怪しげな人物。
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写真9 俳優のRobin Williams氏とPage氏。
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写真10 Windows用Goole Video Playerの画面。
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 米GoogleのLarry Page共同創設者兼製品部門担当社長は2006年1月6日(米国時間),「2006 International CES」で基調講演を行った。Googleの基調講演は,今回のCESで最も注目されていたイベントである。既報の通り,基調講演では「Google Pack」と「Google Video」が発表された(基調講演での発表記事)。この記事では,基調講演の様子を詳しくお伝えする。

 Page氏は冒頭,米国国防総省高等研究計画局(DARPA)の無人ロボット・カー・レース「DARPA Grand Challenge」で優勝した「Stanley」にまたがってステージに登場した(写真1)。Page氏が無人ロボット・カー(ステージ上では有人で運転されていた)を紹介したのは,Googleが描く未来像を示したかったためだ。

 写真2と写真3が,無人ロボット・カーにGoogleの技術が搭載されることによってもたらされる未来像であるという。ドライバーはお腹が空けば車のダッシュボード上の「ハンバーガ・ボタン」を押すだけでよい。「ハンバーガ店の場所を知らなくても,ロボット・カーが教えてくれる」(Page氏)。

 もちろん,このスライドには冗談が含まれているが,Googleでは似たようなことを実現するために,ドイツVolkswagenと共同研究を進めているとPage氏は主張する。写真4は研究の一環である自動車用「Google Earth」のデモだ(写真4)。要はGoogleからデータをダウンロードするカーナビゲーション・システムである。

携帯電話機用Google Earthのベータ・テストが始まる

 Google Earthが使えるようになるのは,自動車だけではない。Page氏は携帯電話機用のGoogle Earthも披露した(写真5)。

 地図だけでなく,衛星画像も迅速に閲覧できる。Googleでは同日,このサービスのベータ版「Local for mobile」(http://www.google.com/glm/)も発表している。Local for mobileは,携帯電話機用Javaエンジン(J2ME)搭載の携帯電話機(米国)で利用できる。

どうして家電製品はつながらないのか

 次にPage氏が触れたのは,同氏が感じている家電業界に対する不満である。「CESに来てわかったのは,本当にたくさんのデバイスが存在することだ。しかし,それらが相互に接続できないことにびっくりした」と語る。例として挙げられたのは,デジタル・カメラだ。「デジタル・カメラはUSBケーブルがないとパソコンにつながらないし,パソコンを相互に接続して写真をやり取りするといったこともできない。もし写真を交換できれば『僕の写真を送るから,君の写真をくれ』と言えるのに」(Page氏)と嘆いて見せた

 Page氏は家電メーカーに対して「なぜ1本のワイヤーで,デバイスをインターネットに接続してソフトウエアをダウンロードしたり,充電したり,自宅や近所の家を結ぶネットワークに接続したりできないのか」と疑問を投げかける。

 Page氏が期待するのはUSBだ。「USBなら,20ドルも出せばどんなデバイスでも接続できる」とPage氏。スライドでは具体的に各アダプタについて,「USB2イーサネット・アダプタは20ドル」「USB2オーディオ・アダプタは10ドル」「USB2ビデオ・アダプタは28ドル」「USB2 VBA/DVI/HDアダプタは推定90ドル」と値段を挙げて見せた(写真6)。要は家電業界に対して「すべての物理的インタフェースをUSBに統一してくれるとありがたい」とお願いしたのである。「消費者としても,デバイスが何でも接続できるのが良いのではないだろうか。Google1社ではこういうことはできないので,皆さんの協力をお願いしたい」(Page氏)と語った。

アフリカからのアクセスが少ないのは悲しい

 Page氏はIT業界や家電業界が取り組むべき課題はまだまだあるとも述べた。「世界中のどこにでもインターネット接続環境があるわけではないのは問題である」とPage氏。Googleでは検索クエリーがどこの国から来たのか把握しているが「アフリカからのアクセスがほとんどないのは本当に悲しいことだ」と語る。そこでPage氏が注目しているのが,米MIT Media Labが進めている「100ドル・パソコン」の事業である。この事業にはGoogleも技術協力をしており「世界中の子供達に1億台のパソコンを配りたい」(Page氏)と夢を語った。

 Page氏は課題をもう1つ取り上げた。パソコン用のソフトが肥大化し,かつメンテナンスが面倒になっている問題である。「この前プリンタを購入したのだが,プリンタのインストールに必要なソフトの容量が400Mバイトにも達していた」とPage氏。また,「パソコンを買ったら,実際に使えるようになるまでにさまざまなソフトをインストールしなければならないし,各ソフトのメンテナンスも大変だ」(Page氏)と語る。

 これらの悩みを解決するサービスとして,「Google Pack」を発表した(詳細記事)。Google Packでは8種類のソフトがまとめてインストールできるほか,パッチの適用などのメンテナンスも自動化される。しかも,ソフトウエアのインストール中も他の作業を継続でき,「面倒なダイアログ・ボックスも出てこない」(Page氏)。

Robin Williams氏が登場し動画配信システムを紹介

 Page氏は「本来ならGoogle Packだけで十分だが,今日はもう1つ重要な発表がある」と続けた。それは「Googleを脳に統合すること」(写真7)だ。するとステージが暗転して,ヘッドギアをつけた人物が登場した(写真8)。その人は,俳優のRobin Williams氏だった(写真9)。

 今年のCESでは,米Microsoft,ソニー,米Intel,米Yahoo!と,すべての基調講演でステージにミュージシャンや俳優が登場した。そしてソニーを除いた3社の講演で,コンテンツ配信に関する新規発表があった。Googleの基調講演でもそれは同じで,Robin Williams氏がジョークでひとしきり会場を沸かせた後に,Google Videoによるコンテンツの有料配信事業が発表された。

 Google Videoは,インターネット上にある動画データの検索サービスだが,「過去のテレビ番組などは検索できない」とPage氏。しかし,Google Videoの配信システムは非常に強力であり,「どんな動画でも1時間あれば世界中の誰にでも渡せられる」(Page氏)。

 そこで,Googleがこの強力な動画配信システムを使って,有料動画事業に参入すると発表したのだ。しかもGoogle Videoでは,誰でも有料でコンテンツを販売できるという。

NBAの全試合やCBSの人気ドラマを配信

 もちろん,既存のコンテンツ事業者とも提携する。その中でも特に有力なパートナが,米国のプロバスケットボール・リーグ「NBA」と,3大ネットの1つ米CBSである。Google Videoでは,NBAの全試合が配信される。何年も前の過去の試合も含まれる。またCBSが配信するテレビ番組に関しては,人気ドラマの「CSI」や「スタートレック」,視聴者参加番組の「サバイバー」などが含まれる。

 Google Videoでは,すべての動画をWebブラウザ上で稼働する専用プレイヤを使って最初の30秒を見られる。もしそこで気に入れば,動画データをダウンロード購入する。動画データの形式には,パソコン用だけでなく,iPod用やPSP(プレイステーション・ポータブル)用のものもある。

 ダウンロードした動画は「Google Video Player」で再生する。Google Video Playerでは,各シーンをサムネイル表示して,見たいシーンに飛んだりできる(写真10)。Page氏は薄着の女性が出ているシーンを迷わず選択し,会場を笑いで沸かせていた。

 なおGoogle Videoが日本から利用できるようになるかどうかは,現時点では決まっていない。後ほど行われた記者との質疑応答でもPage氏は「さまざまな契約上の問題があるので,非常に難しい」と述べるに留まった。

「Google PC」のウワサを一笑

 展示会での基調講演では珍しいことに,最後には質疑応答の時間が設けられた。しかし,この質疑応答は,Page氏とRobin Williams氏の2人が回答する(Robin Williams氏の返答はすべてジョーク)という型破りなものだった。

 質疑応答では,噂になっていたGoogle PC(米Los Angeles Timesの記事)に関する質問も飛び出したが,Page氏は「そんな噂があるんですか?」と冷淡に返答しただけだった。