写真1 テレコムサービス協会が開催したMVNO協議会のパネルディスカッション
写真1 テレコムサービス協会が開催したMVNO協議会のパネルディスカッション
[画像のクリックで拡大表示]
写真2 MVNOのビジネスモデルを説明するイー・モバイル
写真2 MVNOのビジネスモデルを説明するイー・モバイル
[画像のクリックで拡大表示]

 テレコムサービス協会(テレサ協)は12月21日,MVNO協議会を開催。電話設備を持たない事業者が携帯電話事業に参入するMVNO(仮想移動通信事業者)の制度整備に向けたパネルディスカッションを行った。MVNOに設備を提供する側の携帯電話事業者,MVNOとして参入を希望する企業や団体が,それぞれの立場で意見を述べた(写真1)。

 この中で,MVNOに設備を提供することを新規参入時のビジネスモデルに据えるアイピーモバイルと,イー・アクセス傘下のイー・モバイルは両社が想定する具体像を示した。

 イー・モバイルは,現在の携帯電話事業者が採っている垂直統合型のビジネス・モデルだと「マスを狙ったサービスしか提供できない。MVNOでは既存のサービスとは違ったものを考える」(諸橋知雄・事業開発担当執行役員)と宣言。「携帯電話では,コンテンツと端末の機能は切っても切り離せない」(諸橋氏)として,MVNOがコンテンツと端末を用意し,それ以外の携帯電話設備をイー・モバイルが提供するビジネスモデルの一端を披露した(写真2)。

 一方,コンテンツ配信事業者のインフォシティは,「さまざまなレイヤーの企業にもビジネスチャンスが生まれる」(岩浪剛太代表取締役)との考え方から,MVNOのルール整備に大きな期待を寄せた。例えば「漫画週刊誌のコンテンツが見られる端末を,毎週200円という契約で読者に販売する」(岩浪氏)といった,回線ではなくコンテンツで収入を得るモデルを紹介した。

 また,既にMVNOとしてサービスを提供中の日本通信は,「既存の携帯電話事業者には設備を貸してくださいと頼んでいるが,共通の言語がないため困っている」(福田尚久取締役CFO)として,ルールの整備を要求した。

 MVNOの議論は11月末に,テレサ協で始まったばかり。パネルディスカッションでの議論は手探り状態だったが,各社のプレゼンテーションで問題点やビジネスモデルが見え始めた。行政側の総務省は「今後,パネルディスカッションでの議論も踏まえながら,行政として問題提起をさせていただく」(総合通信基盤局データ通信課の大橋秀行課長)と発言。今後は,総務省主導でMVNOのルール整備が推進される見通し。

 パネルディスカッションには,既存の携帯電話事業者から「ボーダフォン」,新規参入事業者から「アイピーモバイル」とイー・アクセス傘下の「イー・モバイル」が参加した。このほか,MVNOとしてサービス中の「日本通信」,MVNOに回線サービスを提供することを検討中の「インデックス」,コンテンツ配信側から「インフォシティ」と「モバイル・コンテンツ・フォーラム」,「総務省」が顔をそろえた。モデレータは,佐藤治正・甲南大学経済学部教授が努めた。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション