写真1 Bluetooth SIGのエリック・シュナイダー マーケティング・ディレクタ
写真1 Bluetooth SIGのエリック・シュナイダー マーケティング・ディレクタ
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 Bluetoothの仕様策定などを行う団体「Bluetooth SIG」のアジア太平洋・日本担当であるエリック・シュナイダー マーケティング・ディレクタ(写真1)が来日。Bluetoothの現状と今後の仕様拡張について聞いた。

--Bluetoothの近況を教えてほしい。

 Bluetoothデバイスは現在,全世界で毎週950万台のペースで出荷されている。2005年末までに市場に出回っている機器の台数は,5億台に上る。認定製品は2600種類だ。Bluetoothを搭載した自動車も増えているし,オートメーションや医療機器などの新規市場も出てきている。
 アジア太平洋地域は,Bluetooth機器の製造拠点,ソフトウエア開発体制,マーケットのいずれの面においても,最も成長率が高い地域だと言える。そこで今年,香港オフィスを開設した。ちなみに日本からは,282社がBluetooth SIGに参加している。

--近距離の無線通信技術はほかにもある。それらの技術と,今後どのような関係を保っていくのか。

 「BluetoothやUWB(ultra wide band)など多くの技術があるが,開発中の機器にどれを搭載すればいいのか教えてほしい」とよく聞かれる。一つで全部できるという技術はない。つまり,いろんな技術が今後も残っていかなくてはならない。それをうまく収れんさせていくのが我々の役目だ。その端緒が,Bluetoothで高速な通信が必要となる場合に,UWBを使えるようにすることだ。ユーザーはあくまでBluetoothを使うイメージだが,Bluetoothデバイスのディスカバリ(発見)機能などでBluetoothまたはUWBの周波数帯を使える。仕様の策定は順調にいっている。
 もう一つの連携相手がNFC(near field communication)。データ交換などで使われる技術だ。Bluetoothは,機器のペアリングにNFCを使おうとしている。ほかにも選択肢はあるが,多くの機器ベンダーがNFCでいこうという方向になりつつある。
 それから無線LAN(Wi-Fi)。BluetoothのようなPAN(personal area network)の技術ではないが,Bluetoothと共に使えるようになっている機器が多い。さまざまな機器で両者が共存できるよう,いろんな作業を共同で実施することを目指している。Zigbeeは大規模な商用化がまだだが,この技術とも共存する方向性でいく。
 今後は,小さなデバイスに2~3個の通信技術が搭載されるようになっていくだろう。ユーザーが「このアプリケーションを使いたい」というとき,どの通信技術を使うのかということを自身で考えなくても自動で相互に機能することを検討していかなくてはならない。だからこうした取り組みを進めている。

--Bluetoothは今後,どのように進化していくのか。

 現在の最新仕様は「2.0+EDR」。次バージョンは,2006年1月にまとめて同6月に公表する予定だ。QoS(quality of service)に対応させ,アプリケーションのパフォーマンスが落ちないようにする。Bluetooth機器をペアリングする際のステップ数も減らす。ここで先ほど説明したNFCを使って,デバイスを認識させようとしている。セキュリティと使用電力の最適化も行う。
 さらに次のバージョンは,2007年1月ころにまとめて第4四半期に公表する予定だ。その仕様はUWBの無線を使えるものとなる。マルチキャスト機能も盛り込む予定。現在は1対1の通信だが,マルチキャスト対応で同じデータを複数のデバイスに送ることができるようになる。複数のユーザーが一度に同じゲームを楽しんだり,ストリーム・メディアを複数の機器に配信したりできる。

(山崎 洋一=日経コミュニケーション