総務省は12月13日,通信自由化20周年の記念シンポジウムを開催した。1985年のNTT民営化と新電電の参入から20年経過したことを契機に開いたものだ。シンポジウムの冒頭,主催者代表として竹中平蔵総務大臣が登壇。「IT担当大臣だった3,4年前と比べてブロードバンドで世界最先端となった」として,サービス面での成果について高く評価した。

 一方で,NTTグループなど通信事業者の現状には厳しい評価を下した。通信自由化20周年の総括として「事業者の数は(NTTとKDDの)2社から1万3000社に増えたが,光ファイバや携帯電話では特定の事業者が(シェア)5割を超えている。特に固定電話でNTTのシェアが98%。当初,期待されていたほど競争が進んでいないのではないかと言われていることは承知している」と,NTTグループが市場で高いシェアを持っていることについて懸念を表明した。

 そして最後に,「今後の競争をどうしたらよいのか,私の元でも懇談会を作り幅広く政策を議論をしていきたいと思う」と締めくくった。

 竹中大臣の発言は通信業界で注目を集めている。2000年から2001年にかけて,NTTの分割に何度も言及しているからだ。今回,競争促進の面から通信業界の懇談会を立ち上げる方針を示したことで,NTTの力を弱めたり新電電の力を強めるといった政策展開がなされる可能性が出てきた。

 竹中大臣は,NHKの放送事業者としての在り方を議論する私的な懇談会を2006年早々に立ち上げることを決めている。このNHKの懇談会と,シンポジウムで発言した通信事業の懇談会の関係は現段階では明確ではないもののの,通信・放送の融合が注目される中,全くの無関係な二つの懇談会が並立する可能性は低いと見られている。

 シンポジウムでは,続いて奥山雄材・前KDDI社長,桑原守二・元NTT副社長,坂田浩一・元日本テレコム社長などがパネリストとして登壇。通信自由化20周年の成果について振り返った。

 竹中大臣は,これらシンポジウムでの議論も「政策に反映させたい」としている。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション