イー・アクセスは11月10日,携帯電話事業を受け持つ子会社のイー・モバイルが,吉本興業子会社の投資ファンドからの出資を受け入れる方針を決めた。携帯電話事業への新規参入が総務省に認められたことを受け,経営方針などを説明する記者会見の席上で明らかにした。出資規模は「現在調整中」(エリック・ガン副社長兼CFO)だが,数十億円程度となる見通しだ。
イー・モバイルは,イー・アクセスから450億円,東京放送(TBS)から100億円の出資を受け入れ済み。さらに米ゴールドマン・サックスから,約250億円の出資を受ける方向で調整中だ(関連記事)。「吉本興業,米ゴールドマン・サックスほか数社の合計で約330億円程度を見込む」(エリック・ガン副社長)。携帯電話のインフラ敷設の資金とする見通しだ。
吉本興業やTBSから出資受け入れは,コンテンツ面の強化という狙いもある。「携帯電話事業でも,今後どのようなコンテンツを提供できるかが重要になると見ている。吉本興業は特定の分野では極めて有力なコンテンツを保有している。出資は大いに歓迎したい」(千本倖生会長兼CEO)。
機器メーカーとの交渉は最終段階,基地局設置用地の取得はこれから
2007年3月に開始する予定の携帯電話サービスのインフラ準備状況は,「採用する基地局メーカーの選定が最終段階にある」(種野晴夫社長兼COO)ことを明らかにした。基地局を設置する用地の取得は,現時点ではほぼ手つかず。新規取得や既存事業者との共用を含め,今後交渉を進める予定だ。段階的にエリアを広げる予定のため,全国をカバーするには数年かかる。
全国網が整うまでは,NTTドコモなど既存携帯電話事業者からローミングを受ける方針だ。「NTTドコモからは具体的な交渉は免許取得以降と言われている」(千本会長)ため,これから交渉がスタートする。
既存事業者との競争では,「実は日本の携帯電話市場は遅れている。香港や欧州の一部で携帯電話普及率は100%を超えているが,日本は70%に過ぎないからだ」(千本会長)と,日本には未開拓市場があるとの見解を示した。欧米で当たり前だが日本で充実していないサービスや端末の例として,プリペイド方式の携帯電話サービス,SIMカードによる端末の使い分け,海外事業者との国際ローミング,PDA(携帯情報端末)同様の機能を持つ高機能端末などを挙げた。
注目される通信料金は,「計画はあるが,他社との競争上,いっさい言えない」(千本会長)とするにとどまった。
携帯電話とは別に,無線ブロードバンド「WiMAX」を使ったサービスにも積極的に取り組む。WiMAX向け周波数として有力視される2.5GHz帯の再編議論が2006年初頭にも開始されることを踏まえ,千本会長は「機器が具体化しないと方針を確定できないが,基本的には周波数の割り当てを狙いたい」と表明した。