日本IBMは10月19日から20日にかけて、伊豆・天城にソフトハウスやシステム・インテグレータ29社の幹部を集め、SOA(サービス指向アーキテクチャ)のセミナー/会議「SOA Business Exchange」を開催した。4月の「SOA Technology Summit」(関連記事)に続く第2弾に当たる今回は、システムの構築事例を中心にSOAの具体像を示すことで、パートナの協力を仰ぐことを狙った。

 「SOAのリファレンス・ケースは海外のほうが多い。だが、SOAに本気でシフトしなければいけないのは日本企業のほうではないか。実際、世界での競争にさらされている日本の大手企業は、5年後を踏まえてIT戦略を考えるべきとの機運が出ている。SOAによって何ができるかを現実感を持って示すことができれば、同調してくれる顧客はきっと増えるはずだ」。日本IBMの三浦浩 執行役員ソフトウェア事業担当は、こう話す。

 イーマニファクチャリング、イーシー・ワン、フェアウェイ ソリューションズ、日本IBMの4社で共同で開発した「SOAソリューションモデル」は、今回の会議で初登場の事例。イーマニファクチャリング製SCMパッケージの機能をサービスとして利用できるようにして、IBMのアプリケーション・サーバーが持つESB(エンタープライズ・サービス・バス)を介してフェアウェイの製造業向けパッケージ・ソフトから呼び出す納期回答システムの構築を通じて、SOAに基づくシステムの具体像を示した。

 説明を担当したイーシー・ワンの最首英裕社長は、波を待つサーファーやヨットの写った由比が浜の写真を見せながら、「SOAの波はもうすぐ来る。悩むほど難しくはない」と強調。その一方で、「まだ解決されていない課題も多い」点も強調した。

 課題の一つとして最首社長が挙げたのは、「ビジネス・プロセスとシステム・プロセスとの間には、依然として大きな隔たりがある」こと。「SOAでは『プロセスの可視化が必要』とよく言われる。だが、プロセスを表せばビジネスを表現したことになるかと言えば、答えはたぶんノー。現時点でBPM(ビジネス・プロセス・モデリング)と呼ばれるものは、極めてシステム寄りのプロセスだ。この点を誤解してはならない」(最首社長)。成果物は、日本IBMのパートナ向けWebサイトからダウンロードできる。

 日本IBMは、同社が手がけているSOAの事例に関しても説明した。内容は、あるサービス業大手が現在、SOAに基づいて進めている基幹システム再構築プロジェクトに関して。説明は初期フェーズの内容が中心だったが、具体的な事例をパートナに示すことでSOAの“現実感”は増したと言える。同社は近く、この事例に関して正式に発表する予定という(セミナーでは具体的な社名とともに内容を説明したが、10月20日時点で報道機関への公開を認めていない)。