大手コンピュータ・メーカーが、パートナであるソフトウエア・ベンダーやシステム・インテグレータの幹部を山中の研修施設に集め、2日にわたって「SOA(サービス指向アーキテクチャ)」に関して議論する――こうしたユニークな試みが、4月14日から15日にかけて行われた。日本IBM ソフトウェア事業部門がソフト会社やインテグレータ計23社の幹部を伊豆・天城に集め、「SOA Technology Summit」という名称で開催したものだ。

 システム全体を「サービス」の集合体ととらえるSOAは、経営変化に強い「俊敏なシステム」を実現できる次世代システム・アーキテクチャとして有望視されている(日経コンピュータ4月4日号特集「俊敏な情報システム」を参照)。ここでいうサービスは、一つあるいは複数のプログラムを業務の単位などでまとめておき、実装の形態を問わず共通のやり方(インタフェース)で利用できるようにしたものを指す。

 日本IBMはすでに、SOAに関して(1)Webサービスの開発/実行環境(WebSphere Application Server、Rational Web/Application Developerなど)、(2)ESB(WebSphere Business Integration-Message Brokerなど)(3)コレオグラフィーの作成/実行(WebSphere Business Integration Modeler)といった製品を提供している。ESB(Enterprise Service Bus)はサービス同士の連携に必要な機能を提供するミドルウエア、コレオグラフィーはサービスを連携して実行するワークフロー(ビジネス・プロセス)を指す。加えて、この夏から秋をめどにSOA導入支援サービス「SOMA(Service-Oriented Modeling and Architecture)」を正式発表する予定だ。

 SOAを普及させるには、こうしたIBMの製品やサービスだけではまだ十分ではない。サービスそのものを作ったり、さまざまなサービスを組み合わせてユーザーに提供するパートナの協力が欠かせない。こうした意識のもと、パートナにSOAのことやIBMの取り組みを知ってもらい、協力を仰ぐというのが、IBMがSOA Technology Summitを開いた狙いである。

 「いま、ビジネスを変革する手段としてシステムを活用したいと考えるユーザーが急増している。この声にこたえるには、SOAのようなフレキシブルに変えられる新たなシステム・モデルが不可欠。SOAをプラクティカルなものにしていくには、パートナの皆さんの協力がぜひとも必要」。執行役員ソフトウェア事業担当の三浦浩氏は、出席者にこう訴えた。ただ、参加したパートナの多くはSOAに関して、まだ勉強/検討フェーズ。関心は高いものの、採用には慎重な姿勢をとる企業が多かった。

 その中で目立ったのは、「SOAは国産ベンダーが協調する大きなきっかけとなる」というクラステクノロジーと日立ソフトウェアエンジニアリングの講演。クラステクノロジーは生産管理を中心とする業務パッケージ群「ECObjects」を開発・販売している。日立ソフトはクラステクノロジーと提携し、ECObjects向け原価管理パッケージ「ECObjects/CostACC」(仮称)を5月に販売する予定。「SOAの仕組みを取り入れてインタフェースを統一すれば、異なる会社が開発した製品をまとめたパッケージを実現しやすくなる。“純国産”連合を形成して、海外ベンダーに対抗したい」と両社は語る。IBM担当者を交えたSOAに関する白熱した議論は、深夜まで続いた。

田中 淳=日経コンピュータ