松下が公開した高速電力線通信の実験の様子(電話機の奥に置いてあるのがPLCモデム)
松下が公開した高速電力線通信の実験の様子(電話機の奥に置いてあるのがPLCモデム)
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漏えい電磁波の電界強度も常時測定(青線が電力線モデム稼働前の最大値,黄線が稼働後)
漏えい電磁波の電界強度も常時測定(青線が電力線モデム稼働前の最大値,黄線が稼働後)
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 松下電器産業とパナソニック コミュニケーションズは,幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催中の「CEATEC JAPAN 2005」で高速電力線通信(PLC:power line communication)の実証実験を公開した。

 実証実験では6台の電力線通信モデムを使い,サーバーからテレビへの高精細テレビ(HDTV)伝送,IP電話,Webカメラでの映像配信の三つを,実際の電灯線を使って行った(写真上)。電力線通信の実証実験ではHDTV伝送だけが通例。松下電器産業によると,今回公開したトリプルプレイの実験は国内初という。

 松下が開発中の電力線モデムは,最高速度が半2重で170Mビット/秒。実験では,20Mビット/秒のHDTV伝送と,Webカメラからパソコンへの2Mビット/秒の映像配信,IP電話間での通話を行ったが,映像品質や音質が乱れることはなかった。これは,モデムに搭載した独自のQoS(quality of service)技術が効果を発揮しているためだという。

 松下が公開した2M~30MHzの周波数帯を利用する高速電力線通信は,国内での実用化がまだ認められていない。このため実験を公開するに当たり,総務省から実験免許を取得した。

 ブース裏に設置したループ・アンテナでは,常時,漏えい電磁波の電界強度を測定した。その様子をブース内のスペクトラム・アナライザで公開(写真下)。「モデムを稼働させる前の雑音レベルを測定し比較しているが,電力線通信モデムを稼働させた場合の電界強度が稼働前の最大値を上回ることはほとんどなかった」(松下ブースの説明員)という。またモデム自体は,10月4日に開催された総務省の「高速電力線搬送通信に関する研究会」でまとまった規制値案を満たしていると説明した。

(山根 小雪=日経コミュニケーション