［ICTパネル討論会］モバイルブロードバンド＋クラウドで開ける“次”の企業ネットワーク

写真●昨年のICTパネル討論会「2010年のエンタープライズ・モバイル」の様子

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　モバイル通信環境が激変している。最大のきっかけは、米アップルのiPhoneや米グーグルのAndroidを搭載した端末など、新しいタイプのスマートフォンが充実してきたことだ。最近のスマートフォンは優れたユーザーインタフェース（UI）を備え、様々なアプリケーションを利用できる。この点が魅力となって、コンピュータリテラシーが高いコンシューマーだけでなく、多くの企業ユーザーが、業務効率改善のツールとして注目するようになっている。

　従来も企業として携帯電話機を業務に使う例はあった。典型例が、外出先からの日報や報告書の入力だ。ただ最新のモバイル環境を考えると、今まで以上に業務に使いやすくなってきている。端末UIの進歩が理由の一つだが、それだけではない。モバイル端末の選択の幅が広がったこと、そして「クラウドサービス」が整ってきたことなども、大きな要因である。

　もともと、大きなメモリー容量を持たないモバイル端末は、アプリケーションやデータをサーバー側に持たせるクラウドとは親和性が高い。では現状の日本のモバイルデータ通信は、どこまで進展してきたのか。モバイルとクラウドの組み合わせにより、ユーザーはどこまで業務効率を高められるようになるのか。そこでITpro EXPO 2010のICTパネル討論会では、「通信事業者が描くモバイルクラウド」という1コマを設けた。パネリストには、モバイル通信事業者4社のキーパーソンにご参加いただく。

端末、技術の進展でクラウド活用が浸透

　モバイルクラウドを考えるうえで見逃せないのは、端末の進化である。代表例がアップルのiPadだ。日経コミュニケーションが調査した結果では、企業ユーザーのiPad利用意向はAndroid端末の利用意向に匹敵するほどで、4社に1社以上は、今後導入する端末として興味を抱いている（詳しくは10月1日発行の日経コミュニケーション10月号に掲載予定）。

　今後さらに、iPadと同じタブレット型/スレートPC型のAndroid端末が増える。NTTドコモは2010年の冬モデルのラインアップに、タブレット型のスマートフォンを加える計画だ。しかも一方では「モバイルルーター」が充実してきているため、端末はスマートフォンである必要もない。

　モバイルルーターは、第3世代移動体通信（3G）やモバイルWiMAXなどモバイルブロードバンド通信機能と、無線LANアクセスポイント（AP）の機能を併せ持つ携帯型ルーターである。公衆無線LANのAPを持ち歩くようなもので、無線LAN対応の端末があれば、どこからでもインターネットを利用できるようになる。その分、ユーザーにとっては端末の選択肢が広がるわけだ。

　一方で、無線の高速化もモバイルクラウド進展の一翼を担う。ドコモが年末に「Xi」（クロッシィ）としてスタート予定のLTE（Long Term Evolution）、イー・モバイルのDC（Dual Cell）-HSDPA、UQコミュニケーションズのモバイルWiMAXなど、数十Mビット/秒クラスのサービスが充実すれば、ユーザーはクラウドや自社のアプリケーション利用にストレスを感じなくて済む。特にLTEは遅延が小さい点が特徴で、クラウド利用に向くとされている。

　では、料金を含め、これらの環境が多くの企業にとって“現実解”となるのはいつころなのか。パネルでは、各社の今後の計画や法人モバイルユーザーの動向、ニーズの高いアプリケーション/ソリューションなどについて、各事業者に尋ね、近未来像を探る。企業ユーザーとしては見過ごせないセキュリティ対策などについても、現状でできること、今後の強化の方向性などについて聞く。

　実はモバイル端末に関しては、ほかにも気になるテーマがある。例えばSIMロック。NTTドコモは2011年4月以降に出荷するすべての機種に、SIMロック解除用のソフトウエアを標準搭載することを決めた。これは総務省が2010年4月に取りまとめたSIMロックフリーのガイドラインを受けたもので、「ユーザーの選択の幅を広げたい」というのがドコモの主張だ。これに対して、KDDIやソフトバンクモバイルは今までのところ何も対応は見せていない。パネルでは、時間が許す範囲で、SIMロック解除によるモバイルクラウドへの影響についても尋ねてみたいと思っている。