富山県高岡市は北陸本線が通っているだけではなく,JR西日本のローカル線である氷見線と城端線の起点となっている。氷見線は寒ブリで有名な氷見へ伸びるローカル線であり,城端線は麦屋節で有名な城端が終着駅である。

 壇ノ浦の合戦に敗れた平家の落人が移り住み,農作業の合間に都をしのんで唄ったのが城端の麦屋節の始まりだと言われている。

 交通の便が悪い富山県では一家に2台も3台も車があることが普通で,ローカル線の主な利用者は高校生だ。高岡駅と城端駅は44分の距離にあり,高岡駅を除いた一番大きな駅は,砺波市の砺波駅だ。

 上の画像は比較的大きな福野駅だが,懐かしさが十分に漂っている。高岡駅に近い二塚駅,林駅にいたっては無人駅だ。

 マインドストームNXTでロボット・プログラミングをしている小学4年生の娘ほのちゃんは実はかなりの鉄子なのだ。どこかに車で行くよりも,電車で出かけることを好む。もっとも城端線は非電化だから気動車なのであるが。

 のどかな田園地帯を過ぎ,少し山に登ると城端に着く。城端のシンボルとも言われる城端別院善徳寺は一向一揆の拠点としても有名だ。

 城端は坂の町としても知られるが,昔ながらの細い道が多い。人や自転車がやっと通れるような細さだ。

 ロボット・プログラミングをしていて,鉄子だと変わった趣味の女の子だと思われるかもしれないが,そんなことはない。ほのは編み物も大好きだ。城端は絹織物の町としても伝統がある。西陣川島織物の創始者川島甚兵衛の出身地でもあるのだ。

 じょうはな織館で織物体験をすることが,今回の小旅行の一番の目的だ。

 親バカではあるが,なかなか春らしい色に織り上がった。

 さて,このあたりで多くの読者は思うはずだ。単に旅行記なのか,と。ロボットでもプログラムでもないじゃないか。IT系の読みものではなく,娘と出かけたらただ楽しかったっていう話をなぜ読ませられないといけないのか,と。

 どうだろう。これが今回紹介したかったロボットだ。じょうはな織館にはパロが二匹もいるのだ。人に癒しや楽しみを与えるメンタルコミットロボット「パロ」を製造・販売している株式会社知能システムが実は城端にあるのだ。

 パロは頭をなぜるとうれしい顔をするし,アゴをこそがしても赤ん坊やペットのようなかわいい表情を見せる。短い手に握手すると,手を振り替えしてくる。あっちにもこっちにもセンサーが入っているのだろう。また,さわり心地も良い。

 癒しロボットと言っても,所詮ロボットだろうと思っていたが,本当にかわいいのだ。実際に手で触れてみないとその感覚はわからないだろう。ペット嫌いの筆者が,つい「パロ,パロ」と話かけてしまっていた。

 ただ,ひとつ心配なのは,ずっと授乳中なことだ。飲み過ぎても,バッテリはなんともないのだろうか?

 なぜ,じょうはな織館にパロがあるのだろうか。単に城端で作っているからではないだろう。ジャカールが発明したパンチカードのようなものを使う自動織機ジャガード織機がコンピュータの祖先と言われているからかもしれない。

 ジャガード織機については矢沢久雄さんの記事に詳しいが,パンチカードのようなものに描いたビットパターンを読み取って,その通りに糸を織り込んでいくのだ。織機はパロの意外に近い先祖,「ひいおじいさん」くらいなのかもしれない。