筆者はITネットワークアシストたかおか(略称NAT)という地域のIT推進のお手伝いをするボランティア団体に所属し,これまで小学校や児童文化センターでMindStormsを使ったロボットプログラミング講座を実施してきた。

 次年度からは,県のITセンターでも講習を行うのだが,WRO Japanへの参加を考えると,マインドストームRobotics Invention System2.0(RIS2.0)よりも光センサーが2つ付いているチームチャレンジセットの方が良いかと思い,株式会社アフレル(旧永和システムマネジメント教育未来支援事業部)にROBOLABソフトウエア,テキストROBOLAB基礎編とともに注文をした。

3月20日 さっそくチームチャレンジセットが届いたので,昨年度より使っているテキストROBOLAB基礎編に載っているロボットを作ってみようと1セット自宅に持ち帰った。

 「わあー,なんかいいものや,レゴや」と寄ってきたのはほのちゃん(もうすぐ小学2年生)だった。明日一緒にロボットを作ろうかと誘うと大喜びだった。「こうしろうにいちゃんもかずにいちゃんも,もう一緒にやってくれんからね。ほのちゃんが一緒にやってくれるとパパもうれしいわ」とほのの前ではまだ『パパ』なのだ。

 ビニール袋をやぶり,パーツをケースに収めていると,こうしろうがつぶやく。「教育部門はケースの作りが雑だ。コンシューマ向けに比べて手を抜いている。」チームチャレンジセットはEducational Divisionの製品で主に学校などの教育機関をターゲットにしている。

 たしかにケースはどうかと思う。大きい枡のケースと小さい枡のケースを2層にして緑の箱に収めるのだが,パーツが全部入りきらない。どうやって収納するのやろうと考えていたら,白いダンボール箱が折り畳んで添付されていることに気がついた。

 ダンボール箱を組み立て,タイヤなどの大きいパーツを入れると全部収まった。9794チームチャレンジセットにはソフトウエアが添付されていない代わりに828個ものパーツが付いているのだが,ケースはもっとパーツ点数がすくない製品と共通なのだろう。しかし,何の変哲もないダンボール箱を付けとくというのは,手抜きだと言われても仕方がなかろう。レゴファンが悲しむぞ。

 RCX本体はバージョン1.0だ。RIS2.0の本体はその名の通りRCX2.0である。「どうして古いものが?」と思ったが,RCX1.0とRCX2.0のCPU性能やメモリ容量に違いはないので問題はない。それどころかRCX1.0のおしりにはACアダプタで電源を供給するための差込があるので,なおさら便利なくらいである(9-12Vを出力するACアダプタが使える。我が家では昔スーパーファミコンのACアダプタを使っていた。第16話参照)。

 3月21日 ほのちゃんがテキストROBOLAB基礎編をみながら,ローバー(車)を作り始める。父はWBCの決勝キューバ戦を横目でみながら,サポートする。組み立て図をパッと見ただけでは,わかりにくい箇所がいくつかある。

 ビームの何番目の穴にパーツを差し込むかを間違えることが多い。「今作っているところの図だけでなくて,次の図も見たら,どうしてそこに取り付けるのかがわかるよ」と教える。こうしろうやかずのときはこんなに優しく教えなかったなあと思い出す。たいがい「そんなもん,自分で考えろ」で済ましてきた。

 だんだんと大きくなる娘は,もちろん大事な子供であるが,新しい恋人のようなところがある。どれだけ仲良くしても,妻に怒られる心配がない恋人だ。

 三つのケース,もとい二つのケースとひとつのダンボール箱からパーツを探すのは,これまでのマインドストームRIS2.0よりも楽だ。小分け度が高いからだ。

 それでも,やはりなかなか見つけられないパーツもある。「見つからんわ」とぶつぶつ言っていたら,部活から帰ってきたかずが寄ってきて,探すのを手伝ってくれたが,すぐに「見つからんわ」とあきらめる。おいおい,見つからなかったら講習会ができないだろう。そんなお付き合い程度のかずだった。

 ほのは1時間あまりかかってローバーを完成させた。1番のプログラムを実行すると,ローバーはひたすら前進した。「good job」である。

 王ジャパンがWBCの初代王者に決まりかけた頃,ローバーに装着する光センサーユニットを作りはじめた。主役が王ジャパンで,宿命のライバルが韓国,名脇役が例のアメリカの審判という秦建日子でもこうは書けまいというすばらしいストーリ展開だった。ほのは小学1年生分の集中力を使い果たしたようで,今度は私が自分で組み立てを始める。

 まずは光センサーを組み立てた。

 タッチセンサーを組み込んだバンパーも問題なく作成できた。

 ローバー本体に光センサーとバンパーを装着した。ROBOLAB基礎編のテキストに載っているロボットはこれで完成だ。あとはプログラムを工夫して,このロボットにいろいろな動きをさせればよい。

 さて,筆者はMINDSTORMS RIS1.0(英語版),ROBO SPORTS,Ultimate Accessory Set,マインドストームRIS2.0,レゴカムというUSB接続のPCカメラが中心のVISION COMMANDといろいろな製品をみてきたが,チームチャレンジセットには今回初めてみる形の部品がいくつかあった。

何に使うかわからないパーツもあっておもしろい。色使いもめずらしくカラフルだ。Ultimate Accessory Setに含まれていた懐かしのレゴランプも付いている。出力ポートに繋ぐと小さな灯りがつく部品だ。

 「そんな小さなランプが何になるのか?」と疑問に思われるかもしれないが,こいつが意外と役に立つのだ。たとえば,光センサーが暗いと判断したことを確認するためにプログラムでビープ音を鳴らしたり,明るいと判断したときにメロディを演奏させたりする方法をよく使うが,大勢でワアワア言いながらロボットを作っているときは,音が聞こえにくいことがある。そんなときにレゴランプを使って,暗かったらランプを付ける。明るくなったら消すという使い方をすると,それらしくて楽しいのだ。