139話から紹介していたITネットワークアシストたかおか(略称NAT)主催のITフェスタが無事終わった。マインドストームによるロボット・コンテストはそれなりに盛り上がり,ロボット体験教室では,コンテストに出場した小学生,中学生が体験教室参加者にマインドストームを教えた。もちろん,その中には,こうしろうとコンテストには参加していないのだが単に遊びにきたかずも含まれる。

 私はコンテストの冒頭でマインドストームの紹介をした。以下のような内容を,時々詰まりながらしゃべった。最初の英語の部分はテレて言えなかった。今思うと悔しい。


 - Knowledge is only part of understanding. Genuine understanding comes from hands-on experience. -  MindStorms(マインドストーム)英語版バージョン1.0の箱にプリントされているレゴマインドストームの開発者の1人,マサチューセッツ工科大セイモア・パパート博士の言葉です。日本語にすると「知識は理解の一部でしかありません。本当の理解は-hands-on experience-,手を使って経験するところから生まれます。」となるでしょうか。

 マインドストーム の正式名称はLEGO MindStorms Robotics Invention Systemであり,LEGO社とマサチューセッツ工科大の提携によって生まれたレゴブロックで組み立てるプログラム可能なロボット開発キットです。
 マインドストームの本体RCXは手のひら大のブロックです。8ビットのマイクロプロセッサと32キロバイトのRAM(RAMはプログラムを入れておく場所ですね),そして,センサーをつなぐ入力ポートが三つ,モーターをつなぐ出力ポートが三つ,赤外線ポート一つで構成されます。この黄色い箱が制御・演算・記憶・入出力というコンピュータの5大要素を満たしているのです。ゲーム機のプロセッサが128ビットの時代に,8ビットのプロセッサは時代遅れに感じられるかも知れませんが,マーズパスファインダーに載せられて火星探検に行ったロボットも8ビットのプロセッサでコントロールされていました。
 そして,出力ポートに接続するモーター二つと何かにぶつかったことを検知するタッチセンサーが二つ,明るい暗いを感じるライトセンサーが一つ,その他にギヤ,タイヤ,ベルト,コネクタなどがレゴブロックとして多く含まれています。

 マインドストームには二つの側面があります。一つはレゴブロックを組み立てロボットのハードウエアを作ることです。接着材や,ハンダは使いませんので,小さな子供でもチャレンジできますが,その分壊れやすく何度も作り直しが必要になるでしょう。子供達は思考錯誤の中で工夫し,ギヤをはじめとした機械の仕組みを学んでいくことができます。

 もう一つの側面はロボットを動かすソフトウエアの開発です。マインドストームのプログラムはパソコンで専用開発環境を使い,ブロックをつなぐようにしてコマンドを連結し作成していきます。プログラムの基本要素である変数や,繰り返し,条件分岐,そして複数のコマンドをまとめてサブルーチン化することもできる本格的なプログラミン環境です。マインドストーム2.0日本語版では,ヘルプやチュートリアルが充実しており,子供達が1人でも学習できるようになっています。

 プログラミングは本来,学習しにくい性質のものです。それはプログラムがコンピュータの中で実行されるので,何がどのように動いているのかわかりにくいからです。しかし,マインドストームでは,プログラムの実行結果をロボットの動きとしてビジュアル化して確かめることができます。理解しやすいプログラミング教材なのです。
 子供が成長して標準の開発環境に飽きたら,多くのコンピュータで使われているC言語に似た,NQC (Not Quite C)言語やJava言語でロボットを動かすプログラムを作ることもできます。

 現在の子供たちは,ゲーム機をはじめとする与えられたおもちゃで遊ぶことになれすぎて,自分で何かを作り出す機会が少ないのではないでしょうか。また,IT教育はインターネットやソフトウエアの使いこなしと知識の獲得に重点が置かれてすぎているように感じます。
 手を使ってロボットを作り,パソコンでプログラミングを行い,ロボットを動かす。マインドストームはバランスのとれたクリエィティブな「おもちゃ」です。楽しみながら,IT(情報技術)の担い手を育むことができる教材がマインドストームだと言えるでしょう。


 コンテストには6台のロボットがエントリーし,どのロボットもいかんなくその能力を発揮した。


 音楽にあわせて(実際には光に合わせて)踊るロボットや,字を書くもの,ゲームのようにして遊べるものなど皆,個性的で楽しいロボットだった。上記の画像にはないが,ロボットアームや物を運ぶロボットもあった。

 こうしろうのロボットは140話で紹介した通り,接近センサーで人に近づいたことを検知し(出力した赤外線の反射値を読み取っているだけなので,もちろん人でなくても反応する),キャラメルを渡すものであったが,コンテストが終わっても,来場した小さい子にキャラメルを配り続けた。
 その様子は,翌日の地元紙「富山新聞」に『先端ロボット一緒に遊ぼう』というタイトルで紹介された。
 いや,先端でもないのですが…,ロボットがたくさん集まると,作り手の個性が出て楽しいですな。