困った。書くネタがない。10月はこうしろうが忙しい時期である。近頃は学校祭の準備でへたをすると私より遅く,8時を回ってから帰ってくることも多い。帰ってきてからは素っ頓狂な声で歌の練習をしたりしている。聞けば,学校祭の「のど自慢大会」に出るのだと言う。「お前が歌か?」と冷やかすと「お笑い担当だ」と胸をはる。学校祭の他にも,やれ,生徒会だ,部活のハンドボールはもうすぐ大会だ,それから中間テストだ,14歳の挑戦だと盆と正月がダースでやってきたような大騒ぎである。誕生日に買ったFlashもちょっと触っただけでお蔵入りである。

 かずは10月13日に11歳になった。9月15日(敬老の日)生まれのこうしろうと11月3日(文化の日)生まれのほのちゃんにはさまれ,いかにも中途半端な誕生日なのだが,近頃ハッピーマンデーだとかで10月10日の体育の日が10月14日に変わって,かずの誕生日に勝手に接近してきた。もう少しでビンゴになるところであった。11歳と言えばこうしろうがMindStormsを始めた歳である。

 さて,そんなかずの誕生日プレゼントは99話で紹介したEVAアニメーションではなく,IEEE1394のデジタルビデオキャプチャーボードとビデオ編集ソフトがセットになったアダプテック社のDVPICS PLUSであった。



 こうしろうのFLASH MXとかずのビデオキャプチャーボードと,我が家はマルチメディア祭りの様相を呈してきた。しかし,DVPICS PLUSを最初に使ったのは当のかずではなく,学校祭用に自分で編集した運動会や部活の様子を写したビデオをタイムカプセルに入れるためにビデオCDに焼こうとしたこうしろうであった。

 かずは逆にFLASHの勉強に熱心で,兄より使いこなしている。MindStormsのプログラミングには全く興味を示さないかずであるが,アニメーションになると,がぜんエンジンが掛かる。

 そんな折,悲劇が起こった。ビデオキャプチャー中にPCがフリーズしたり,リセットがかかってしまうという現象が頻発した。46話で紹介した自作PCアスロン君(CPU Athlon 900MHz)のマザーボードとIEEE1394のボードとの相性が悪いのだと直感した父は台湾のマザーボードメーカーのサイトから,最新版のBIOSをダウンロードし,慎重に書き換えを行った(BIOSはBasic I/O Systemの略で,最も基本的なソフトウエアである)。再起動を行うが,アスロン君は全く反応しない。「やばい。」マザーボードが壊れてしまった。アスロン君は1年半あまりの短命でお陀仏となってしまった。読者のみなさん,BIOSアップデートにはくれぐれも注意しましょう。真夜中や疲れている時には止めておいた方が賢明です。

 やり切れなさに浸っていると,妻が言う。「やくかつぎよ。」漢字がわからず「なに?」と聞き返す。「パソコンが厄を担いで持って行ってくれたのよ」と彼女は言う。「厄担ぎ」という富山弁らしい。確かに本厄である今年は,どうも悩みの多い年である。タバコを止めたせいもあるのかもしれない。ニコチン中毒は抜けても,時折タバコに依存したい気持ちなる。仕事や会話に区切りやピリオドを打つために,タバコを使っていたのであろう。話を切り替えたり,まとめ直すことに苦心してしまう。身体的にも変わり目である。ぜい肉が付きすぎたり,すぐに目がかすむようになってしまった。不調や,これまでと違うという不安感がネットリと付きまとう。

 そんな厄を背負ってアスロン君がお陀仏になったのだと説得され,気分を変えた。「こうしろう,次のパソコン何買う。メーカーものにしようか?でも予算がないよな。ショップブラントかベアボーンだったら,もうちょっと安心かな」と二人でワクワクし始めた。PC-9821VX,Macintosh Classic II,Presario 7660,自作アスロン君に次ぐ5代目がもうすぐ我が家にやってくることになる。