自然災害や大規模火災などの緊急事態に直面しても企業の中核事業を継続あるいは迅速に再開できるよう、リスク分析に基づいて事前に策定しておく行動計画のこと。


 東日本大震災は地震だけでなく、津波や火災、原発事故、さらには計画停電から風評被害、社員の帰宅困難まで引き起こし、企業に打撃を与えています。被災地にある工場は相次いで操業停止に追い込まれ、今なお再開できない拠点があります。

 震災発生直後の「計画停電」では首都圏に拠点を構える多くの企業が直接的な影響を受けており、電力需要が高まる夏場に電力不足が深刻化しました。そのなかで、事業の継続はどの企業にとっても緊急課題になっています。

 状況を打開すべく、企業は災害対策本部を設置し、復旧や事業継続に向けた取り組みを始めています。そのよりどころになるのが、自然災害や大規模火災などの緊急事態に備えて事前に策定しておく行動計画「BCP(事業継続計画)」です。

 リスクとその影響度を評価し、非常時の指揮命令系統の在り方や復旧手順、継続すべき事業、必要な人員などを決めてあるかどうかで、災害が起きた後に企業が受けるダメージは変わってきます。

効果:中核事業の長期中断を防ぐ

 日本企業は阪神淡路大震災や新型インフルエンザを経験し、BCPの策定が一般的になりつつありました。東日本大震災では企業のBCPが試されたといえます。

 計画の立案に当たっては、優先して継続・復旧すべき事業や目標とする復旧時間の特定、本社機能や生産体制の代替案、情報共有体制の確立などに取り組まなければなりません。平時に教育や訓練を実施して事業継続の取り決めを社員に周知したり、状況の変化に応じてBCPを定期的に見直したりする必要もあります。

 BCPを策定するメリットは2つあります。1つは、中核事業を中断させない、もしくは中断してもすぐに再開できる可能性を高められることです。非常時に場当たり的な対応をしていては、事業の縮小や廃業に追い込まれるリスクが上昇します。あわてず迅速に動けるように、行動手順や責任の所在をあらかじめ明確にしておきます。

 もう1つは、顧客の流出や企業評価の低下を避けられることです。素早く事業を再開できれば、市場や社会からの信頼が高まり、逆にシェアを拡大できる可能性さえあります。

事例:本社機能を即移転

 生命保険のメットライフ アリコ(東京都墨田区)は東日本大震災の発生後にBCPに従い、拠点がある神戸と長崎に一時的に本社機能を移しました。総務や人事、法務、システムなど間接部門を中心に、約100人ずつが神戸と長崎で業務に当たる体制を取りました。

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