グリッド・コンピューティングの実現に必要な機能を実装するための、サーバー・ソフト群とクライアント・アプリケーション開発用のライブラリ群の総称。グリッドの提唱者の一人、米シカゴ大学のイアン・フォスター教授が中心となって設立した業界団体Globus Allianceが開発した。

 オープンソースとして公開されており、同団体のホームページ(http://www.globus.org/)から入手して自由に使うことができる。グリッド関連技術の標準化団体である米Global Grid Forum(GGF)は、Globus Toolkitをグリッドの開発環境として推奨している。

 グリッド・コンピューティングとは、分散処理の一形態。複数のコンピュータ(ノード)にアプリケーションの処理を分割して割り振ることによって、より大きな処理能力を得ることなどが可能になる。それを実現するには、以下のような機能が必要だ。(1)複数のノードを管理し、それぞれにジョブを投入する、(2)プロセサ使用率など各ノードの情報を収集する、(3)データをノード間で転送する、(4)セキュリティを確保する、などである。Globus Toolkitを使うことで、これらの機能を実装できる。

 Globus Toolkitには、複数のバージョンがある。現在の中心は、Globus Toolkit 2(GT2)とGlobus Toolkit 3(GT3)。GT2は科学技術計算で、GT3はビジネス・グリッドで主に使われている。ここでビジネス・グリッドとは、処理能力の向上だけでなく、システム資源の最適化や運用管理の負荷軽減、障害対策などを目的としたグリッド・コンピューティングである。

 GT3とGT2の最大の違いは、GT3がWebサービス関連技術を取り入れたこと。具体的には、GGFが規定した、Webサービス関連技術をグリッド向けに拡張した仕様「OGSI(Open Grid Services Infrastructure)」を採用した。

 Webサービス関連技術を取り入れたことで、より簡単にインターネットを介したシステム資源のやり取りが可能になった。さらに、コンピュータだけでなく、ストレージ、ネットワーク機器といった、すべてのシステム資源を容易に対象とすることができる。どのようなシステム資源を操作するにせよ、Webサービスのインタフェース定義言語であるWSDL(Web Services Description Language)で記述されたインタフェースを利用すればよいためだ。

 GT3は今後、次バージョンのGT4に置き換わる。背景には、GGFが今年1月、OGSIの代わりにWebサービス関連技術の標準化団体OASISが策定中の仕様「WS-Resource Framework(WS-RF)」の採用を決定したことがある。GT3のOGSIの部分をWS-RFを中心とするWebサービスの仕様に替え、GT4とする。

(矢口)

本記事は日経コンピュータ2004年10月18日号に掲載したものです。
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