イーサネットを介して、サーバーとストレージ装置を接続するためのインタフェース仕様。「Internet SCSI」の略で、アイスカジーと読む。iSCSIに対応した機器を利用すると、比較的安価にSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)を構築できるメリットがある。

 通常、サーバーとストレージ装置の間でデータの読み出し/書き込みを実行するに際は、SCSIコマンドを使う。SCSIコマンドをイーサネット上で流すためには、IPパケットに格納する必要がある。この格納方法を定めたのがiSCSIだ。

 利用時は、iSCSIのインタフェースを備えるストレージ装置を用意すると同時に、サーバーにiSCSIのドライバ・ソフトをインストールする。サーバー上のドライバ・ソフトの機能でIPパケットにカプセル化してSCSIコマンドを送信する。イーサネットを介してIPパケットを受け取ったストレージは、IPパケットからSCSIコマンドを取り出し、データの読み出し/書き込みを実行する。

 現在、SANを構築するには、1個当たりの価格が数百万円というファイバ・チャネル・スイッチや、サーバー用のインタフェース・カードを使わなければならない。これに対して、iSCSI対応の機器を使えば、既設のLANがそのまま利用できるので、低コストでSANを構築可能だ。

 ネットワークにイーサネットが使えるようになることで、数十km~数百km離れた地点間の接続が可能になった。ファイバ・チャネルでは、仕様上、接続できる距離は10kmに制限されていた。

 イーサネットを介して接続できるという点は、NAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)も同じだ。ただし、NASとiSCSI対応のストレージでは主な用途が異なる。NASはデータをファイル単位でやり取りするためファイル・サーバー向けなのに対し、iSCSI対応のストレージはブロック単位でのデータ転送が可能なので、データベースなどのアプリケーションからも利用できる。

 iSCSIの仕様は、インターネット技術の標準化を進めるIETFにおいて、米IBMと米シスコ・システムズが中心になって標準化を進め、昨年2月に標準仕様が固まった。この仕様に基づき、IBMや米EMCなどメーカー各社が、iSCSIに対応したストレージを製品化している。

 iSCSIには課題もある。サーバーにiSCSIドライバを搭載してSANを構築する場合、SCSIコマンドをIPパケットに格納する処理に負荷がかかるため、サーバーの処理性能が劣化してしまうことがあるのだ。処理性能の劣化を防ぐ手段としては、ネットワーク・アダプタを利用する方法がある。SCSIコマンドのIPパケット化をハードウエア処理する専用チップを搭載しており、これを利用することで性能の劣化を緩和する。

 今年に入って、iSCSIに準拠した機器を使ってSANを構築し、データをバックアップするサービスを提供するベンダーも登場した。

(松浦)

本記事は日経コンピュータ2004年12月13日号に掲載したものです。
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