福岡県志免町の福岡空港店に試験導入したセルフレジ 写真:飯山 翔三
福岡県志免町の福岡空港店に試験導入したセルフレジ 写真:飯山 翔三
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 九州が中心で全国に109店舗を展開するディスカウントストア大手、トライアルカンパニー(福岡市)は、2009年11月から試験導入しているセルフレジの利用状況を明らかにした。セルフレジとは買い物客が自分自身でPOS(販売時点情報管理)レジを操作して会計を済ませられる機器のこと。レジ担当者の人件費を抑制したり、混雑を緩和することで買い物客の足が遠のく機会損失を減らしたりできる。

 今回の試験導入では「スーパーセンタートライアル福岡空港店」(福岡県志免町)に東芝テック製のセルフレジを導入した。福岡空港店は2階建てで食品・衣類から電化製品まで幅広い商品を扱うが、混雑が激しい2階食品フロアにある全14台のうち4台をセルフレジに置き換えた。同店では1人の担当者がセルフレジの近くに常駐し、操作に戸惑った客にアドバイスしたり、取り消しなどの複雑な処理を手伝ったり、万引きなど不正行為が無いよう見張ったりしている。それでもセルフレジへの投資と引き換えに、人件費を4分の1程度に圧縮できる。

 2010年3月現在でセルフレジ利用者は平日1日当たり約300人、土曜・休日約370人だという。この数字は全顧客の6~7%に当たるが、トライアルによればセルフレジへの投資を3年間で回収するには、1台・1時間当たり12人以上の利用が必要になる。「現在は10人を上回るところまで来ているが、もう少し利用を増やす施策を打たなければならない」(販売本部フォーマット企画部の石橋亮太氏)。もう2割ほど利用頻度を高める必要がある勘定だ。

 セルフレジの利用頻度を高めていくうえで、特にトライアルが重視するのが、買い上げ点数が少ない顧客の誘導だ。買い上げ点数が少ない顧客ほどセルフレジで手早く会計を済ませられる。買い上げ点数が多い場合は有人レジで熟練したレジ担当者が応対したほうが早く会計が済むという。だが2010年3月までのデータでは、土曜・休日の顧客1人当たりの買い上げ点数は有人レジの12.4に対し、セルフレジが11.3とまだ差が小さい。「買い上げ点数が少ないお客様をセルフレジに誘導できるように、店頭でのアピールなどの施策を講じていく」(石橋氏)としている。

 一方で、ポイントカードを持つ常連顧客がセルフレジを好んで利用する傾向も明らかになった。ポイントカードを提示する顧客の比率は福岡空港店全体では60%強だが、セルフレジでは70%を上回っている。商品のバーコードをスキャンした時に、猫の鳴き声などの効果音が出るようにしたので、小さな子供連れの客に喜ばれているという。

 トライアル以外にも、スーパーではイオンやオークワ(関連記事)が、駅売店ではJR東日本リテールネット(東京都新宿区、関連記事1関連記事2)がセルフレジ導入を推進している。トライアルが期待するように小口買い物客の間でセルフレジが定着すれば、流通業各社で導入にさらに弾みがつきそうだ。