東日本旅客鉄道(JR東日本)の駅構内で売店「KIOSK(キオスク)」とコンビニエンスストア「NEWDAYS(ニューデイズ)」を運営するJR東日本リテールネット(東京都新宿区)は2009年5~9月にかけて、店舗システムを刷新する。(関連記事

 約2000台ある既存のPOS(販売時点情報管理)レジや発注端末を新型機に入れ替えるほか、新たに顧客が自ら操作して会計を済ませるセルフレジの導入を開始する。JR東日本の電子マネー「Suica(スイカ)」専用のセルフレジを都内のJR山手線沿線とその周辺の駅を中心に100店舗前後、合計で200~300台を導入する計画だ。POSレジとセルフレジは、ともにNEC製を採用する。

 JR東日本リテールネットが店舗システムを刷新するのは約5年ぶりだ。主な狙いは、朝の通勤時間帯に店舗に押し寄せる顧客が会計待ちにイライラする不満を解消することである。KIOSKとNEWDAYSは平日、朝8~9時に売り上げのピークがやってくるが、特にNEWDAYSはこの時間帯になると、店舗の外まで会計待ちの顧客があふれかえるほど混雑する時がある。KIOSKもベテラン店員による手売り販売をやめて、POSレジでの会計に切り替わっており、かつてのような暗算を駆使した素早いお金のやり取りは見られなくなっている。「現在、POSレジを使った顧客1人当たりの会計処理時間は約20秒。この時間を1秒でも短縮できるように、レシートを出すスピードが速い新型POSレジを投入したり、セルフレジを積極採用したりすることを決めた」(山本信也取締役経営企画部長)

 同社は2007年11月から2008年4月まで、JR山手線の田町駅と大崎駅の2カ所でセルフレジを4台使った実験をした。するとセルフレジは「想像以上に顧客から好評だった」(山本取締役)ため、200~300台規模の導入を決断した。KIOSKやNEWDAYSの顧客の大多数を占める「1品買いの顧客」の場合、セルフレジの操作に慣れてしまえば、10秒程度で会計を済ませられるという。時間は半減するわけだ。

 会計時間の短縮には機会損失を防止する効果もある。「店舗を埋め尽くすお客様を見て、入店をあきらめてしまうお客様を1人でも多く取り込み、売り上げ増につなげていきたい」(山本取締役)。しかもセルフレジが浸透すれば、「ピーク時間帯の店員の数を1人減らすことができるかもしれない」。そうなれば、顧客満足度を上げつつも、人件費も削減できる。

推奨発注も採用し、発注業務時間を30%短縮

 今回の店舗システムの刷新では、店員が在庫補充の発注に使う端末も新型機に替わる。新型機は本部から店舗に各商品の発注数量をリコメンドする「推奨発注」機能を新たに備える予定だ。

 過去の販売実績や翌日以降の天候などから本部システム側で店舗が発注すべき数量を予測し、推奨値を端末に表示する。店員はその数値を承認するか、修正するだけで抜け漏れなく発注業務を完了できる。これなら、店舗経験が短い店員でもすぐに発注業務をこなせるので作業品質の底上げにつなげやすいし、「発注業務にかかる時間を従来より少なくとも30%は短縮できるとみている」(山本取締役)。

 年々、店員の確保が難しくなっている人手不足の小売業界ではここ数年、推奨発注の採用が1つのトレンドになっている。JR東日本リテールネットも同様の決断を下した。