総務省情報通信政策研究所は2014年5月中旬、「高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査<速報>」を公開した。調査結果全体は、6月中に公開するという。調査からは「84.5%がスマートフォンを利用している」「スマートフォン利用開始により睡眠時間や勉強の時間が減ったと高校生が感じている」といった結果が見えてきた(調査結果はこちら)。本調査に同研究所と共同で携わった東京大学大学院情報学環の橋元良明教授に、メディアの進化とそれに伴って高校生など学生たちに見える変化を聞いた。

(聞き手は松本敏明=日経コンピュータ


写真●東京大学大学院情報学環の橋元良明教授
写真●東京大学大学院情報学環の橋元良明教授
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ネット依存傾向の調査を見ると、「勉強の時間」「睡眠時間」が減ったと高校生は認識しているようだ。

 時間が減っているという答えが多いのは、回答者の「自己認識」によるものだろう。実際のメディア利用時間を日記式に記録していく調査手法を使うと、睡眠時間や勉強時間がネットの利用によって著しく減ったという結果は出ていない。

 例えばスマートフォンを持ったまま「寝落ち」してしまったことがあれば、睡眠時間が減ったと回答するだろう。しかし全国平均で利用時間を見るとそれほど大きな変化は出ていない。

 大きな変化は、「ながら利用」が増えているという実態だ。テレビを見ながら、食事をしながら、そして勉強をしながらスマートフォンを使うという実態が見えてきた。このため、全てのメディア利用時間を単純に足し合わせると計算が合わなくなる。

 スマートフォンの場合、例えばテレビを見ている最中にプッシュ型でメッセージが届くと、即座に返事を返さなくてはならない。スキマの時間にスマートフォンを使うため、利用時間がダブルカウントされることになる。つまり、一つのことに集中するのが前提だった従来の調査とユーザーの利用実態が合わなくなっている。

調査では高校生は8割がスマートフォンを使っているようだが、そこで変化はあるか。

 私は今回のネット依存傾向の調査のほかにも、1995年から情報通信メディアの利用時間と情報行動について調査に携わっている(2014年に公開した調査結果はこちら)。