通信機器大手のスウェーデン エリクソンは、現在米フェイスブックなどとともに、「internet.org」と呼ぶプロジェクトを立ち上げ、新興市場でのインターネットの普及やモバイル通信環境改善に向けた取り組みを進めている。この一環として2014年2月、エリクソンとフェイスブックは共同で「イノベーションラボ」の設立を発表。今夏正式オープンする予定だ。エリクソン テクノロジー部門 戦略コミュニケーション ダイレクターのドン・マクロー氏(写真)にその取り組みについて聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=日経コンピュータ


エリクソン グループ・ファンクション・テクノロジー 戦略コミュニケーション ダイレクターのドン・マクロー氏
写真●エリクソン グループ・ファンクション・テクノロジー 戦略コミュニケーション ダイレクターのドン・マクロー氏

フェイスブックと共同で「イノベーションラボ」を設立する理由は。

 アプリケーションの開発者に対して、新興国など高速なモバイルネットワークが整備されていない市場に向けて、どのようにアプリを構築すればいいのか、どうすれば効率的に利用できるのか、といったことを学んでもらうことを目的としている。

 「Facebook」は世界中のユーザーが使いたい重要なアプリケーションの一つ。エリクソンの顧客である通信事業者も、Facebookユーザーに効率的にネットワークを使ってもらいたいと思っている。

 日本や米国、韓国などはLTEによる高速なネットワーク環境が整備されているが、インドネシアやナイジェリアといった国ではネットワークの帯域が狭く、信号の遅延も大きい。さらにそうした国で使われているデバイスはローエンドの機種が多い。ネットワークも遅いし、デバイスの性能も高くない状況だ。

具体的にイノベーションラボでどのようなことをするのか。

 アプリ開発者に対して、例えばインドネシアのジャカルタのネットワーク環境をシミュレートし、そこで彼らのアプリがどのように動作するのかを試してもらう。そして、そうした環境で彼らのアプリがより良く機能するにはどうすればいいのかを見てもらう。

 その一環として、イノベーションラボの開設に先んじて、1月にはエリクソンのサンノゼのキャンパスでハッカソンを開催した。開発者を招き、2日間かけて、シミュレートした新興国のネットワークや、そこで一般的に使われているAndroid端末を用意し、その環境でアプリを試してもらった。

 このハッカソンは、既存のアプリを新興国のネットワーク環境で効率良く使えるようにするための改良をすることが目的で、新興国向けの新規アプリの開発が目的ではない。ハッカソンには、フェイスブックのほか、米ツイッター、米スポティファイ、米イーベイ、「キャンディークラッシュ」のKingなどが参加した。彼らの既存のアプリが新興国のネットワークでどのように動くかを試してもらい、改善につなげてもらう。

 4月30日にはフェイスブックの開発者会議「f8」で第2回のハッカソンも開催した。

イノベーションラボの正式オープンは。

 既にオープンに向けて準備をしており、機器もあり、人員もいる。正式なオープン時期はまだ決まっていない。夏ごろをターゲットにしている。