学生時代のYahoo! JAPAN立ち上げ参画や自らの起業経験を基に、ベンチャー支援を牽引し続ける孫泰蔵 MOVIDA JAPAN社長。「IoT」時代に日本社会の変革をもたらすのは若手起業家だと明言。大企業にはベンチャーのダイナミズムを取り込むべきと意識改革を迫る。

(聞き手は吉田 琢也=日経コンピュータ 編集長)

日本でベンチャーがなかなか育たないのはなぜでしょうか。

孫 泰蔵(そん・たいぞう)氏
1996年、東京大学在学中にYahoo! JAPAN立ち上げに参画後、インディゴ(現アジアングルーヴ)を設立。2000年、オンセール(現ガンホー・オンライン・エンターテイメント)の代表取締役就任。05年、ガンホーを大証ヘラクレス市場(現JASDAQ)に上場。09年、スタートアップ企業の育成・支援を手掛けるMOVIDA JAPANを設立し、代表取締役社長 兼 CEOに就任。1972年佐賀県生まれの41歳。(写真:村田 和聡)

 最大の理由は、ベンチャー支援のエコシステム(生態系)が無いことです。日本には、起業家が会社を立ち上げてから事業を成長させ、最後にIPO(新規株式公開)やM&A(合併・買収)を成し遂げるまでのライフサイクル全体を支援する仕組みが整っていません。そうしたエコシステムを作らない限り、シリコンバレーのようにイノベーションが次々に生まれる社会にはならないと確信しています。

 特に問題なのは、会社の立ち上げから少し時間が経過し、顧客の数がまだ十分に多くない成長過程の微妙な時期に、なかなか支援を受けられないことです。豊富な資金や技術、顧客基盤などを持つ大企業には、そのような時期のべンチャーをぜひ支援してほしいのですが、あまり進んでいないのが実態です。