手のひら認証など革新的なATMサービスを相次ぎ投入。金融機関の顧客満足度調査ではメガバンクを圧倒――。ユニークなIT活用で独走する地銀・大垣共立銀行の土屋嶢頭取は、顧客目線でサービスを考え抜くことが正しい道と言い切る。

(聞き手は吉田 琢也=日経コンピュータ 編集長)

「銀行はサービス業だ」と繰り返し強調されていますね。今年1月に公表された金融機関ランキングでも、顧客満足度は全体の4位、リアル店舗を持つ銀行では、メガバンクを抑えてナンバー1でした。

土屋 嶢(つちや たかし)氏
1970年3月、慶應義塾大学法学部卒。同4月に富士銀行入行。77年、大垣共立銀行入行。融資部審査役、総合企画部長代理、取締役名古屋支店長、取締役外国部長を経て、84年に常務取締役。86年、専務取締役。93年6月、取締役頭取に就任。46年8月生まれの67歳。(写真:菅野 勝男)

 顧客目線の経営を徹底するよう、常に心掛けてきました。お客様から「こうしてくれないか」と言われたら、何とかしてそれを実現する方法がないかを、私も現場も突き詰めて考える。1994年に全国で初めて365日営業のキャッシュコーナーを設けたのも、まさにお客様の声に応えるためでした。

 顧客目線のサービスを追求するようになったきっかけは、1990年代後半からの金融ビッグバンで、他行や異業種企業との本格的な競争が始まったことでした。その時に、大垣共立銀行はサービス業として生き残るしかないと決意したのです。今でも店舗に「365」と書いた看板を掲げているのは、そのスピリットを持ち続けるためです。