2013年度上期決算での大幅減益を受け、不採算案件撲滅と収益拡大への道筋を探るNTTデータ。岩本敏男社長は日本流SIの課題と限界を見極め、高収益体質へ転換するカギは、生産技術の革新しかないと言い切る。

(聞き手は吉田 琢也=日経コンピュータ 編集長)

250億円の減益要因となった不採算案件の原因をどう分析していますか。

岩本 敏男(いわもと・としお)氏
1976年3月に東京大学工学部卒業、4月に日本電信電話公社(現NTT)入社。91年4月にNTTデータ通信(現NTTデータ)金融システム事業本部担当部長。人事部部長、第一金融システム事業部長などを経て、2004年6月に取締役。取締役執行役員金融ビジネス事業本部長、代表取締役副社長執行役員を経て、12年6月より現職。1953年1月生まれの61歳。(写真:陶山 勉)

 当社は年間1万件以上のSI(システムインテグレーション)を手掛けています。これだけ多いと不採算案件をゼロにするのは無理ですが、全売上高の0.3%、およそ40億円以下に抑えるという方針で色々な手を打ってきました。ところが今回は大規模な不採算案件が6つも同時に発生し、カバーしきれませんでした。

 この6件は当社にとって「新しい顧客」「新しい業務」「新しい技術」のいずれかに該当する、挑戦的な案件でした。複数の「新しい」が重なった案件もあります。うち金融の2件では、初期段階でプロジェクトのスコープを見誤り、作業工数を過小評価していました。

 一方、製造1件とユーティリティ3件の不採算は、使用した開発方法論に起因しています。この開発方法論は当社標準のTERASOLUNAではなく、うち1件のプロジェクトの中で新たに考案したものでした。使い始めた当初は順調で、成果が出ているように見えたため、他の3件も飛びついたのです。ところが隠れていた問題が最後のテスト段階で噴出し、上流工程への大きな手戻りが発生してしまった。飛びついた3件でも同じ事態が発生しました。