トレンドマイクロは2013年11月5日、企業向けにファイル共有を実現するソフトウエア製品「Trend Micro SafeSync for Enterprise」を発表した(関連記事:トレンドマイクロ、企業向けに社内外とファイルを共有できるソフトウエアを発表)。DropBoxやSkyDrive、Google Drive、Boxなど個人向けや企業向けのクラウドストレージサービスがいくつもある中で、企業向けソフトの提供に乗り出したトレンドマイクロは何を目指しているのか。同社執行役員ビジネスマーケティング本部の新井一人本部長に狙いを聞いた。

現在の企業内のデータ管理はどのような状況にあるとみているか。
2000年代に、当時の環境の下で、多くの企業が独自にセキュリティポリシーを確立した。2010年を過ぎて、クラウドコンピューティングが広がり、スマートフォンやタブレットといったマルチデバイス化が進み、企業に取り入れられたことで、過去に作ったポリシーが現実にそぐわなくなっている。
いくつものクラウドストレージサービスがあり、企業内の個人が利用している。こうした中で企業が従業員向けにデータ管理のソリューションを導入するにはハードルが高いように思える。
セキュリティ製品すべてに当てはまることだが、企業はセキュリティにかかわる事故が起こりうる可能性と事故による損害を見積もって投資の判断を下す。クラウドやマルチデバイスが広がっている今、企業としてセキュリティにどう取り組むかを再定義するときに来ている。
トレンドマイクロは、従来の「デバイスに対する」セキュリティから考え方を改め、「ユーザーのデータに対する」セキュリティを重視するようになっている。スマホやタブレットなど新しいデバイスが次々に現れて企業に浸透していく中、デバイスは何であってもデータを守るという考え方を推し進めている。
ただ、全く新しい投資を求めるのでは企業にとって導入のハードルが高い。そこでActiveDirectoryと連携する機能をSafeSync for Enterpriseが備えるなど、企業内にある管理システムと組み合わせられるようにする。
ユーザーとなる企業からの反応はどうか。
何社かと話をしているが、企業のIT部門の担当者からのニーズは高かった。特に最近は管理すべき社員が多いのに対して、例えばクラウドストレージなどのサービスで誰が何を使っているか把握しきれなくなっており、ここに情報漏洩リスクが存在する。
個人を中心に広がっているクラウドストレージサービスに対して、企業として代替手段を提供しないと、これらサービスの利用を抑止できない。かといってサービスの利用を禁止すると、社員の生産性を下げてしまいかねない。
こうした点に危機感を持った企業では、事故を抑え込むためにソリューションを導入したいと考えているようだ。
既にアジアでSafeSync for Enterpriseを投入していると聞くが、手ごたえは。
2012年11月から台湾で提供を始めたが、手ごたえはある。例えば官公庁や学校など公共機関が3割近く導入しているなど市場性も見えてきた。タイなど東南アジアでも10月に提供を始めた。
提供して感じたのは、企業や組織がデータ管理についてニーズを持っているということだ。ただ導入の仕方は企業によって違いがあり、全社で一律で導入する場合や、部門単位で導入して徐々に広げていく場合がある。