インフラとITの融合、研究所と事業部門の連携によるイノベーションの創出――。日立製作所の新たな取り組みが、アジアで進みつつある。日本の拠点に比べて要員や予算といった経営リソースに制約があるなか、「小所帯」であることを強みに、小回りを利かせて臨んでいる。根底にあるのは「欧米勢に負けてなるものか」という反骨心だ。日立製作所のシンガポール子会社、日立アジアでICTソリューションビジネス部門を率いる梶芳光寿シニアバイスプレジデント&ゼネラルマネジャーに聞いた。

(聞き手は大和田 尚孝=日経コンピュータ


梶芳光寿氏

シンガポール拠点の担当エリアと主力ビジネスは。

 マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアなどを含むASEAN全域を統括している。売り上げは、絶対額は非公開だが、日本に比べたら「吹けば飛ぶ」程度しかない。ただし順調に伸びている。

 IT分野のビジネスは、今は日系企業の現地法人向けが中心だ。ERP(統合基幹業務システム)パッケージの導入などを手掛けている。ビジネス全体に占める日系企業の割合は国にもよるが、タイは日系が圧倒的に多い。シンガポールは現時点では日系が8割程度だが、現地の政府や企業向けのビジネスを増やし、3年後ぐらいには現地向け比率を5割程度に高めたい。

 実は昨年から、事業規模の拡大を目指し、現地向けビジネスを強化している。政府系機関や大企業など、ビッグアカウントの獲得を目指して、提案活動を始めているところだ。

現地向けビジネスは、欧米や地場のIT企業との競争も激しいと聞くが、勝算はあるのか。

 十分にある。特に「インフラとITの融合」という日立の掲げる戦略は、ASEANでは強みになる。ASEANではインフラが未成熟なところも少なくない。それだけに、電力や鉄道、社会プラントといったインフラに関連する提案には、興味を持ってもらえる。

 そうしたインフラの案件にITの要素を組み込んで、一体型のソリューションとして提案している最中だ。ビッグデータを活用したプラント施設の予防保守、あるいは高度医療支援など、ITを使えばインフラ提案の付加価値を高めることができる。