通信事業者向け伝送装置の分野で大きな存在感を見せる仏アルカテル・ルーセント。大容量の光やIP伝送装置に加えて、最近ではシリコンバレーにSDN(Software Defined Networking)ソリューション開発専門のベンチャー「ニュアージュネットワークス」(Nuage Networks、Nuageはフランス語で“雲”の意味)を設立するなど、SDN分野にも積極的にアプローチしている。そんなアルカテル・ルーセントのIP/伝送事業部門を率いるバジル・アルワン(Basil Alwan)プレジデントに、最近の通信事業者向けのネットワーク分野における動向を聞いた。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション

現在の通信事業者向けのネットワーク分野のトレンドを教えてほしい。

仏アルカテル・ルーセント IP/伝送事業部門プレジデント ポートフォリオ戦略統括 バジル・アルワン氏
仏アルカテル・ルーセント IP/伝送事業部門プレジデント ポートフォリオ戦略統括 バジル・アルワン氏
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 通信事業者向けのネットワーク分野のトレンドは2つある。帯域のさらなる拡張、そしてSDNだ。

 前者の帯域のさらなる拡張は、この10年間の流れの延長上のアプローチだ。事業者はビット当たりのコストを下げるプレッシャーにさらされている。我々はソフトとハードのテクノロジーを推し進め、より多くの帯域を求める事業者の要求に応えた製品を出している。例えばXRSというコアルーターは、世界最高レベルの実装密度を持ったコアルーターであり、16Tビットの容量を1ラックで実現する。

 コア・ネットワーク分野は光伝送技術とIP伝送技術の組み合わせで構成する。我々は光伝送分野は古くから進めており、この分野でのリーディングカンパニーだが、IP伝送分野は2004年から事業を始めた。今やIP分野でも世界2位のプレーヤーになっている。

 今後は、光レイヤーとIPレイヤーの統合がホットトピックになる。我々は2013年1月に光分野とIP分野の組織を一体化した。他の多くのベンダーと異なり、光とIPの分野の双方を手がけているため、事業者にとって最適な選択ができる点が強みだ。

もう一方のSDNについては業界で大きな関心を集めている。

 確かにSDNは大きなトレンドとなっている。だが本当のことを言えば、ほとんどの大規模な通信用システムでは、何年も前からコントロールプレーンは分離されていた。問題はどのような要素を中央集中化し、コントロールするのかだ。

 我々は2年前からSDNに大きな関心を抱き、社内ベンチャーとしてシリコンバレーにニュアージュネットワークスという企業を立ち上げた。ニュアージュネットワークスには、将来を見据えて新しい通信システムを作れと指示した。

 もともと最新のルーター製品の80%の投資はソフト開発に振り向けられている。既存のルーティング技術で培った技術もSDNに大いに活用できる。そこでニュアージュネットワークスには、我々が培った技術にすべてアクセスできるようにし、世界で最も進化しているSDNを作れと命令した。ニュアージュネットワークスでは現在、トライアル段階に入っていて実際に動作するプロダクトがある。