「苦労の割に売り上げが少ない」「国内事業に注力した方がよいのでは」「リスクが大きすぎる」――。日系企業のアジア拠点でビジネスに挑む担当者は、奮闘むなしく、日本本社からこのような“切ない”指摘を受けることが少なくない。どうすれば本社サイドの理解を得られるのか。NTTデータのアジア太平洋地域の統括会社、NTTデータアジアパシフィック(APAC)の深谷良治CEOに、グローバル化の要諦について聞いた。

(聞き手は大和田 尚孝=日経コンピュータ


写真●NTTデータアジアパシフィックCEO 深谷良治氏
写真●NTTデータアジアパシフィックCEO 深谷良治氏
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NTTデータのAPAC地域でのビジネス状況は。

 売り上げは、中国を除くAPAC全体で25%増ペースを維持している。具体的な金額は非公開だが、グループ全体の売り上げ(2012年度で1兆3019億円)からすると、まだ少ない。どんどん増やしていきたいと思っている。

APAC地域での主なソリューションとターゲット顧客は。

 ソリューションは三つに分類できる。

 まず各国の政府向けの大規模システムだ。センサーを使って橋梁の状態を監視する「BRIMOS」や航空機の飛行経路設計システム「PANADES」などの実績がある。日本での政府システム構築のノウハウを生かして、こうした案件を増やしていきたい。

 次に各国の金融機関向けシステムだ。現地の金融機関と日系を含む外資系金融機関の両方がターゲットとなる。個別の金融機関だけでなく、金融機関の間をつなぐ金融インフラシステムや決済ネットワークなども手掛けたい。受注には時間がかかるだろうが、当社が得意とする領域だけに、将来に向けて今から仕込んでいきたい。

 それから、一般企業向けのITソリューションだ。現地に進出する日系企業がメインの顧客である。製造業向けのERP(統合基幹業務システム)パッケージ導入といった案件だ。

ビジネス拡大に向けた課題は。

 政府向けや金融機関向け、一般企業向けなど、それぞれのソリューションを担当する日本国内の各事業部が、本腰を入れてAPACでのビジネスに取り組めるかだ。各事業部が主体となり、我々現地の拠点がそれを支える形が理想的である。