写真●NRIアジア・パシフィックの小竹敏社長
写真●NRIアジア・パシフィックの小竹敏社長
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 野村総合研究所(NRI)は長期経営計画「ビジョン2015」で中国・アジア事業の強化・拡大を掲げている。その計画を最前線で推進するのが、シンガポールのアジア統括拠点、NRIアジア・パシフィックだ。売り上げを3倍弱(推定)のペースで伸ばしている同社の小竹敏社長に、アジアでの事業戦略について聞いた。

(聞き手は大和田 尚孝=日経コンピュータ

アジア地域では売り上げが3倍ペースで伸びているとのことだが。

 絶対額は公開していないが、確かに売り上げは伸びている。増収に合わせて要員も増やしている。2011年度末は18人だったが、2012年度末には28人まで増やし、今は30人となっている。コンサルタント、プロジェクトマネジャー、アプリケーションSEと基盤系SEなどを擁し、顧客のニーズに対応している。

メインの顧客は日系企業か。

 そうだ。ほぼ100%が日系企業向けであり、日系企業のアジア進出をシステム面から支援している。具体的には進出前の現地市場調査、進出を決めてからのシステム構築・導入、進出後のサポートサービスなどだ。

 最近は特に日系企業のアジア進出が盛んなだけに、仕事の引き合いは増えている。以前は必死に売り込みをしたが、現在は仕事の依頼がどんどん舞い込む状態だ。

具体的なソリューションは。

 ERP(統合基幹業務システム)システムのクラウド提供サービスが好評だ。米QADの製品を使っている。クラウド型サービスなので、導入企業はサーバーの購入や管理が不要だ。1ユーザーから使え、短期間で使い始められる。

 日系企業は進出先の拠点にIT部門を置かないケースも多く、手軽に使える点が受けている。アジア全体で、既に120サイトが稼働している。特に東南アジアでの利用が伸びている。

現地企業向けのビジネスは手掛けないのか。

 現地企業向けの事業については、出資したシンガポールのIT企業であるマインドウェーブ・ソリューションのチャネルを通じて、少しずつ手掛けていく計画だ。

 ただしメインはあくまで日系企業向けだ。自社の強みを生かせるのは、日系向け事業だと考えるからだ。強みを生かせる領域で、しっかりと着実にビジネスを推進していきたい。

日系企業のアジア進出が加速するのに伴い、アジアに打って出る日系IT企業も増えているようだが、競合はあるか。

 日系IT企業とは商談でぶつかることが多い。一方で現地のIT企業とはそれほど競合しない。先ほども述べたように、日系企業は進出先にIT部門を置かないところが少なくない。こうした企業にとっては、現地のIT企業を使いこなすのは難しいと思う。

ASEAN(東南アジア諸国連合)で注目の国や地域は。

 タイとインドネシア、それからフィリピンだ。タイとインドネシアは製造業を中心に日系企業の進出が目立つ。フィリピンはマニラ近郊やセブ島などで、ビジネスパークの整備が急速に進んでいる。政情は安定しているし人口も増えている。これらの国に今後の可能性を感じている。