日系IT企業の海外事業は、日系現地法人向けが中心――。こうした常識を打ち破り、売り上げ倍増ペースで成長を続けている海外法人がある。NTTデータインドネシアだ。大谷明社長に、現地ビジネスの最新状況と課題について聞いた。

(聞き手は大和田 尚孝=日経コンピュータ

インドネシアでの事業規模とメイン顧客は。

写真●NTTデータインドネシア社長の大谷明氏
写真●NTTデータインドネシア社長の大谷明氏
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 社員は現時点で50人程度、売り上げは10億円規模だ。売り上げは年2~3倍のペースで伸びている。NTTデータのアジア子会社の中でも、伸び率は上位の方だ。

売り上げ倍増とのことだが、どんな戦略で臨んでいるのか。

 現地の政府や国有企業、一般企業向けのビジネスを中心としている。日系企業向けは全体の15%程度にとどまる。

 日系向けは大きな受注につながりにくい。大規模な案件については日本本社で決めるため、現地法人には決定権がないケースが多いからだ。日系企業から受注できるのは、1億円に満たない小規模案件がメインとなる。

 一方、現地向けであれば国有企業や金融機関向けで数億円、政府系の案件なら一度に数十億円以上という大規模案件の受注が可能だ。

現地の政府やローカル企業向けビジネスでは、具体的にどんな案件を手掛けているのか。

 ハードウエアの導入を絡めたビジネスだ。金融機関の支店やガソリンスタンド、小売業の店舗などで使う決済端末などにソフトを載せたシステムを提供するといったものだ。

ハードの導入では、儲からないのでは。

 それは日本での話だ。インドネシアの場合、日本ほどはハード価格が下落していない。日本でも昔は、ハードの導入で十分にビジネスが成り立っていた時代があった。インドネシアは今まさにそのような状況にある。

 1拠点当たりの売り上げや利益はそれほど大きくなくても、たくさんの拠点に導入できれば売り上げは上がるし利益率も向上する。サーバーサイドの大規模システムよりも、支店向けの小型システムをこなしたいと考えている。

ハード導入ビジネスで、競合IT企業と差異化ができるのか。

 付加価値をつけるために、ハードを当社が購入し、そこにソフトを搭載して現地企業に貸し出す事業モデルを実現している。導入企業は初期投資を抑えられるメリットがある。インドネシアは成長の過程にあるだけに、拠点を拡大したいが資金が足りないという悩みを抱える企業が少なくない。もちろん、ハード導入後のサポートサービスでも付加価値をつけられる。

SI事業はどうか。

 現地ローカル企業向けに、パッケージソフトの提供を推進している。日本市場向けとは異なる、アジア向けの独自ソフトだ。例えば割賦販売の支援ソフト。インドネシアでは割賦販売の扱いが多く、割賦販売の支援ソフトがないかと打診されることがよくある。