かつて大手家電量販店の一角を占めたラオックスは、2000年代に業績不振に陥り、2009年に中国の最大手家電量販店、蘇寧電器(現・蘇寧雲商集団)の傘下に入った。現在、羅怡文社長の下で、中国での店舗展開に乗り出すなど事業構造の転換を図っている。日中関係の悪化が事業に影を落とす中、日中のビジネスの架け橋を目指す。羅社長にその事業戦略を聞いた。

(聞き手は木村 岳史=日経コンピュータ 編集委員)

蘇寧がラオックスを買収した目的は何だったのですか。そして狙い通りの成果が出ていますか。

羅 怡文(Luo・Yiwen)
1985年に上海財経大学を卒業。同年に上海第一百貨店入社。89年に来日。92年に中文書店を創業し、在日中国人向け新聞「中文導報」を創刊。95年に中文産業を設立し、代表取締役社長に就任。2006年に上海新天地(現・日本観光免税)の代表取締役社長に就任。09年8月より現職。1963年、中国上海市生まれ。(写真:陶山 勉)

 蘇寧グループがラオックスを買収したのは、ラオックスを通じて日本の商品、人材、経営ノウハウ、ビジネスパートナーを求めるためでした。ただ、当時のラオックスには“看板”しかありませんでした。マイナスからのスタートだったのです。店舗は数店で、そのほとんどが赤字でした。日本の店舗だけを運営していても、将来性はありません。蘇寧が出資した目的も達成されませんので、事業を再構築してきました。

事業の再構築は具体的にはどういったことですか。

 基本的には、三つの柱から成ります。一つめが免税事業。中国人旅行者などを対象にした免税店に注力しています。日本の人口が減る中では、国内の店舗と言えどグローバル市場に成長を求めないといけません。この数年間で、北海道や福岡、沖縄、大阪など海外からの旅行者が多い地域で、免税店のネットワークがほぼ出来上がりました。

 二つめの柱が中国での店舗展開です。蘇寧自身が中国最大の量販店ですが、ラオックスも日本の量販店として中国に進出し、2012年の1年で約10店舗を展開しました。これらは5000平方メートルから一万数千平方メートルの大型店舗です。今やラオックスは、海外勢として最も事業規模が大きくなっています。米国のベスト・バイは既に撤退しました。ヤマダ電機も数店舗にすぎません。

 三つめの柱は貿易仲介事業です。我々は今、日中のゲートウエイになろうとしています。具体的にはまず、中国に日本の商品を持っていったり、あるいは中国製の家電を日本で卸したりしています。さらに中国進出を目指す小売業に、現地のビジネスパートナーを紹介するといったことにも取り組んでいます。この仲介事業は、3本柱の中で最も伸びる可能性があると見ています。