欧州の地域標準化を決めるとして知られるETSI。ただ最近は、NFVやM2Mの議論の場として日本のみならず世界中から注目を集めている。2011年に日本人として初めてETSIのボードメンバーに就任したNECの釼吉氏に、ETSIの最近のトピックや、ITU-Tなど他の標準化団体との関係を聞いた。

(聞き手は加藤 雅浩=日経コミュニケーション編集長)

2011年11月に日本人初のETSIボードメンバーに選ばれた。そもそもETSIとはどのような標準化団体なのか。

釼吉 薫 氏
釼吉 薫(けんよし・かおる)氏
1958年生まれ。84年に大阪大学工学部修士課程を修了し、日本電気(NEC)に入社。89年7月、第一交換ネットワークシステム事業部ソフトウェア部主任。その後、交換移動通信企画室企画課長、キャリアソリューション企画本部統括部長などを経て、NECのテレコムキャリア企画本部に所属(現職)。NEC勤務の傍ら、1988年からITU-Tの標準化活動に参画。2008年10月にITU-T SG11副議長に指名され、2013年3月に再任(現職)。2011年11月に日本人として初のETSIボードメンバーに選任(現職)。(写真:新関 雅士)

 ETSIは欧州に3つある地域標準化団体の一つ。欧州委員会が設定したマンデートを欧州標準として規格化することが本来の役割だ。

 ただ現実には、世界でビジネスを展開する、いわゆるグローバルベンダーがETSI標準を推進しつつ、グローバルマーケットでその製品を展開しているという状況がある。その意味でETSIは、グローバルレベルの標準を策定している。ETSIの中では「グローバルスタンダードプロモーター」と自称することもある。

 ETSIには多くの先進国が参加し、BTやフランステレコムといった通信事業者、スウェーデンのエリクソンなどが技術について先進的な議論を活発に行っている。そうした議論の中から、3GPPやGSMAといった移動体通信分野における国際レベルの組織が生み出された。

NGN(Next Generation Network)の標準化のころから、ETSIはITU-Tに先駆けて規格を作るようになった。

 確かにNGN以前は、ITU-Tの決めた国際標準を地域標準として実装することが主な作業だった。それがNGN以降は、ITU-Tよりも議論を先行し、ETSIが頭一つ抜け出したという印象を持っている。

 ETSIのボード会議では、挙手によるボーディングで決まることがよくある。だから決定までが早い。