日経情報ストラテジーは「CIOオブ・ザ・イヤー2012」に、ヤマトホールディングスの小佐野豪績執行役員を選出した。ヤマト運輸に入社後、システム部門を経て関連会社の社長を経験。「経営とITの融合」をテーマに、顧客の利便性向上と業務効率化の両立を目指す姿勢が選考委員から評価された。

(聞き手は酒井 耕一=日経情報ストラテジー編集長)


CIOの役割をどうお考えでしょうか。

ヤマトホールディングス 執行役員 小佐野 豪績氏(写真撮影:北山 宏一)
ヤマトホールディングス 執行役員 小佐野 豪績氏
写真撮影:北山 宏一
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 経営とITの融合の達成を常に考えています。ITシステムは、ともすれば経営戦略から離れて、システム投資自体が仕事になりがちです。そうならないよう戦略との一体化を目指しています。

 ヤマトグループは2019年に創業100周年を迎えるにあたり「アジアナンバー1の流通・生活支援ソリューションプロバイダー」を目標に掲げています。その達成のためラストワンマイルの強化を重点項目にしています。ラストワンマイルには2つの意味があり、1つは顧客に近づく新たな方法。もう1つはIT活用による密着度の向上です。

 IT活用から説明しますと、自宅や職場にいるお客様がスマホや携帯端末で「ヤマトの配送車はどこにいる?」と、お客様目線でIT活用できることにあります。近所に来ているのが分かれば外出を控えたり、玄関で待っていてくれたりするかもしれない。こうなるとドライバーも配送効率を高めたり、訪問時間を節約したりできるので、お互いにメリットがでます。このようにIT活用は日々の仕事や経営戦略につながっていることを確かめながら、投資やルール作りを進めるのが大切です。

 別の例で言えば、ヤマトは通販会社さんから依頼を受けて、商品配送を代行しています。通販というのは、お客様が注文してからお届けが早いほど、キャンセル率は低くなります。ヤマトが届け先のお客様の基本情報や在宅の確率が高い時間帯などを把握しておけば、スムーズに配送できる。

 私たちは今、情報のフルデジタル化を進めています。配送先などを紙伝票に入力しれもらうのではなく、データ入力してもらう。そのデータをデジタルで保管する。そうしたデータベースは配達委託を受けた時にも生きてくるのです。フルデジタル化は、当社にとって、次世代システムである「第8次NEKO(ネコ)システム」の構築につながるものです。情報管理やセキュリティーも徹底しなくてはなりません。

 デジタル化とセキュリティーが盤石になれば、新規事業も進めやすい。最近は家電製品の回収・修理にも力を入れています。各電機メーカーさんは外部委託を増やしています。私たちが製品を取りに行き、修理してお届けする。これが別の「ラストワンマイル」でもあります。