私物のスマートフォンやタブレット端末の業務利用を許可・奨励するBYOD(Bring Your Own Device、私物デバイス活用)への関心が高まっている。最新の端末を個人的に所有する従業員の期待は高まるばかりだが、企業の視点では様々な課題がある。米ガートナーで情報セキュリティ技術の調査・分析を担当するエリック・ウェレット バイスプレジデントに話を聞いた。

(聞き手は清嶋 直樹=ITpro


スマートフォンやタブレット端末など、従業員の私物を企業・組織に持ち込んで業務利用する、いわゆるBYODに対する関心が高まっている。どう理解するべきか。

 ガートナーはコンシューマー(一般消費者)向け技術が企業のITに大きな変化を及ぼす現象を「コンシューマライゼーション」と呼び、長期間にわたるトレンドとして重視している。BYODは、中長期的なコンシューマライゼーションの流れと、ここ1~2年に高性能でデザインが優れたスマートフォン、タブレット端末が急速に普及したこととが重なって起きている現象だ。

企業側は、追加コストをかけずに業務効率を上げられるという期待を持ちがちだ。

情報セキュリティに詳しい米ガートナーのエリック・ウェレット バイスプレジデント
情報セキュリティに詳しい米ガートナーのエリック・ウェレット バイスプレジデント
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 コストについて、短絡的に考えるべきではない(関連記事)。

 コンシューマライゼーションの流れの中では、一時点を見ると一般消費者向け製品が企業向け製品よりも優れているように思える時がある。現時点だけを見れば、企業内で使っている機器よりも自宅や家電量販店にあるスマートフォンやタブレット端末のほうが高性能で優れているのは確かだ。ただし、2~3年後も同様の状況にあるかどうかは、冷静に検討する必要がある。

 最新鋭のスマートフォンやタブレット端末は、決して安価ではない。アクセサリーやネットワーク機器などもセットで買えば5万~10万円にはなるだろうか。汚れたり壊れたりすることもある。従業員が3~4年サイクルで最新のものに買い換えなければならないとすれば、自己負担は相当大きくなる。それだけ負担しても、企業向け製品のような充実した保証やサポートは望めない。個人向けの価格で買うよりも、企業が法人向けの価格でまとめ買いした方が安いケースもあるだろう。