「カカオトーク」は韓国で2800万近くの登録ユーザーを抱えるスマートフォン向けのコミュニケーションツール。ユーザー同士が無料でチャットをしたり、通話したりできる。同種のアプリとして日本ではNHN Japanの「LINE」が人気で、約1600万ユーザーを抱える(2012年5月12日時点)。カカオトークは日本に進出しているものの、ユーザー数は230万~240万とLINEの後塵を拝している。こうした現状をどのように見ており、今後日本市場でどのようにしてシェアを獲得していくのか。カカオジャパン CEOのFrodo Park氏に聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=ITpro

現在の会員数は。

カカオジャパン CEO Frodo Park氏
カカオジャパン CEO Frodo Park氏

 登録会員はグローバルで約4600万人。アプリのインストール数だけだと9000万に上る。重要なのはアクティブユーザーで、グローバルで約3500万人が最低でも1週間に1度は使っている。

 3500万人のうち、8割は韓国のユーザーだ。日本のユーザーは230万~240万で以前からあまり変わっていない。日本法人としては危機感を持っている。カカオトークは韓国でしか使われていないのでは、と思われてしまいかねない数字だ。

日本ではLINE(開発はNHN Japan)のユーザー数が約1600万(全世界では約3500万)と発表されている。これをどう分析しているか。

 LINEは当初、無料電話が訴求のポイントになっていた。現在はチャット(LINEの用語では「トーク」)で使う「スタンプ」(関連記事:アプリビジネスを成立させるための課金手段)の提供を中心に展開しているようだ。

 また「LINE Card」(LINEの公式グリーティングカードアプリ)などを提供しているのに対して、カカオは韓国では既に同じようなことをしているものの日本で展開できていない。LINEは日本中心にサービスを展開しており、スピード感もある。カカオトークの場合は、韓国での成功体験を忘れないとグローバルでの挑戦は難しく、そこでの勝ち目はないと常々言っている。

コミュニケーションアプリ市場の現状をどう見ているか。

 同じようなコミュニケーションアプリでも国ごとに流行したきっかけが違う。カカオトークは韓国では当初無料SMS(ショート・メッセージ・サービス)として流行に火が着いた。LINEは日本では無料電話ということから流行した。

 中国では「微信(weixin、ウェイシン)」というアプリが流行している。音声によるショートメッセージのやり取りが中心でトランシーバー的に使われている。

 各国で流行したきっかけは異なるが、カカオトークもLINEも微信も、実は機能的にはどれもほぼ変わらない。いずれも同じような機能が使える。各国で普及させたいと考えたとき、最初のインパクトが重要。各国でユーザーが欲しがる機能が何かによって広め方は異なると思っている。

 ただ、こうやって最初に広まっても、それがあっという間に覆ることがあると思っている。それを感じたのが数カ月前、あるコミュニケーションサービスが24時間近く停止した時だ。カカオトークも韓国のIDCのトラブルが原因で6時間近くサービスが止まったことがある。だが、その時、いずれもユーザーからのクレームがほとんどなかった。

 今や似たようなアプリ/サービスが数多く存在する。代替手段も多い。どれか特定のサービスが止まってもユーザーは実はあまり困らない。これはこうしたサービスが簡単に乗り換えられることを意味している。韓国でカカオトークが圧倒的なシェア1位だとはいっても、入れ変わるときは一瞬かもしれないという危機感を持っている。