スマートフォン向けのアプリを開発し、マーケットで流通させるためのハードルは低い。一方で、いざアプリを配信して収益を上げるとなると、そのハードルは急上昇する。無料アプリに慣れ、アプリを購入することに対して強い抵抗感を抱くユーザーが多数存在する中、どのような形でアプリによる収益を上げていけばいいのだろうか。第5回はアプリビジネスを成立させるための課金手段を考察する。

低価格化・無料化で厳しさを増すダウンロード課金

 スマートフォンのアプリマーケットで最もスタンダードな課金手法は、アプリ1本当たりに価格を付けて販売する「ダウンロード課金」だ。だがこのビジネスモデルは、現在もなお厳しい状況にある。第2回第3回で解説したように、App StoreやGoogle Playは参入障壁が低いだけに開発者間の競争が激しく、アプリの低価格化が一層進んでいるためだ。

写真1●85円のアプリがランキング上位を占める
写真1●85円のアプリがランキング上位を占める
App Storeのダウンロード課金アプリ上位を示す「トップ有料」のランキングは85円のアプリが占めていることが多い
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 実際App Storeを見ると、有料アプリの値下げセールは日常茶飯事。ランキング上位の有料アプリは、特にiPhone向けでは85円のアプリが大半を占めている状況だ(写真1)。この価格で毎月100万円の売り上げを上げるとなると、マーケットに3割の手数料を支払うことを考慮した場合、月当たりおよそ1万6000~1万7000本、年間で約20万本以上は販売しなければならない計算になる。ビジネスとして成立させるには、かなり厳しい状況であることは理解できるだろう。

 ビジネスを成立させるうえで、さらに大きなハードルとなっているのが、無料アプリの存在だ。特にGoogle Playは無料アプリが占める割合が高いと言われており、App Store以上に有料アプリのダウンロード販売が難しいという声を耳にする。

 競争激化による有料アプリの販売低迷が、アプリのさらなる低価格化、ひいては無料化を招き、ユーザーが「アプリはタダが当たり前」「500円もするアプリは高すぎる」という認識を高めていく。それによって、有料アプリの購入をためらうユーザーが増え、販売がより一層厳しくなるという悪循環に陥っているのが、ダウンロード課金アプリの現状といえる。