2011年7月にPC事業を統合した事業グループ「NEC レノボ・ジャパン グループ」を発足させた、NECと中国レノボ。合弁会社「Lenovo NEC Holdings B.V.」の社長に就任したNECパーソナルコンピュータの高須英世社長は、「特定の市場でシェア1位を取ることは、事業上の大きなメリット」として、合弁の意義を強調する。「知的財産権の共有には制限を設けない」など、事業の融合を加速する。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ

今年1月にPC事業の提携と合弁を発表して以来、合弁会社の発足に向けてどのような統合作業をしてきたのか。

NECパーソナルコンピュータの高須英世社長
NECパーソナルコンピュータの高須英世社長

 企業文化も仕事の進め方も全く異なる両社で、どうすれば最もスムーズに合弁を組むことができるか、その統合作業に最も注力した。特にNECとレノボでは、業務プロセスが大きく異なる。

 レノボはグローバルで生産・販売している。かたやNECのPC事業は日本国内が中心だ。製品の企画から開発、販売、サポートまで、ほぼすべての機能が国内にある。業績の数字をどう統一的に見られるようにするか、業務プロセスをいかに整合させるかといった課題の解決に取り組んできた。

合弁会社を作る意義を、改めて聞きたい。

 レノボとNECの事業のシナジー(相乗効果)を発揮して、より魅力のある製品を開発・販売する。それによって顧客満足度の向上をさらに追求する。この2点に尽きる。

 NECにとっては、レノボの技術やグローバルの部品調達網を活用して開発や生産のコスト低減を図り、製品価格の変動に対する対応力を高める。レノボにとっては、NECの日本市場向け技術やサポート網を活用して、製品やサービスの品質を高めることができるだろう。

NECとして、具体的にどのような分野の製品を開発するのか。

 まず今後注力するのは、タブレットやスレートといわれる新しい分野の製品だ。Windows搭載機やAndroid搭載機など、様々なタイプの製品を投入する。

 低価格製品については、消費者向けと企業向けで対応を変える。消費者向けでは、NEC製品とレノボ製品で一定の棲み分けができていると認識している。比較的低価格な製品については、レノボ製品が優位だ。ここへNEC製品を投入して競合する意味合いは薄いと考えている。

 一方、企業向けはいささか事情が異なる。両社とも、低価格製品を積極的に展開しておらず、競合していない。NECとして、ここは狙い目だと感じている。

 ただし共同ブランドの製品を出すことはしない。販売チャネルや営業部隊も、従来のまま両社の体制を維持する。

両社の知財、無制限に共有

合弁によるシナジーとは、具体的に何か。

 両社の知的財産を共有できることだ。NECからはデータのバックアップやパソコン間での移動など、利用者の操作を助ける各種のソフトウエア。レノボからは、同社の研究開発拠点である「大和研究所」の品質管理や検査のプロセス。これらが候補になる。

 既に両社の開発部隊の間では、具体的な意見交換を始めている。同じグループ企業同士、互いの知財は無制限に共有できるようにする。

合弁でNEC・レノボ陣営は国内PC市場シェアで首位の座をさらに強める。

 ある市場で首位になることは、メーカーとして絶対的な強みとなる。海外の部品サプライヤーやソフトのメーカーが、新製品や新技術を日本市場に売り込むときにどうするか。市場シェアが首位のPCメーカーに、まず売り込むことで、市場性を見極めようとする。

 つまり市場シェア首位の企業は、新しい製品や技術トレンドを、他に先駆けて取り込むことができるようになるわけだ。そうすればより良い製品を作ることができ、さらにシェアを伸ばす原動力となる。この好回転を維持するためにも、シェア1位は堅持する。2位ではダメなのだ。

とはいえ、スマートフォンやタブレットが普及して、「脱PC」の流れは加速している。PCという製品そのものの位置付けが揺らいでいるのでは。

 位置付けが変わるのは確かだが、存在感が弱まることはない。様々なデジタル機器を連携させるための「ハブ」として、PCは依然として重要な意味を持ち続ける。