米セールスフォース・ドットコムがサービス展開する国の中で、日本市場の成長率は最も高いという。今後、東京でのデータセンター開設をテコに顧客獲得ペースをさらに加速させる考えだ。同社のジム・スティール プレジデント兼チーフカスタマーオフィサー(CCO)に、日本市場の特徴や今後の戦略などについて聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ
米セールスフォース・ドットコムのジム・スティール プレジデント兼チーフカスタマーオフィサー
米セールスフォース・ドットコムのジム・スティール プレジデント兼チーフカスタマーオフィサー

CCOとはどういった役割で、営業とは何が違うのか。

 CCOは戦略的に重点を置くべき顧客を定期的に訪問し、利用状況や要望などを聞き、今後も継続して利用してもらえる関係を築いたりすることが大きな役割だ。顧客の声をサービス開発などへ反映していく。世界の中で米国や日本など8カ国を特に注力すべき市場と位置付け、さらにこれら市場における重要顧客を設定している。私は世界中の重要顧客に会うために日々出張している。私の業務時間の8割程度を、顧客と話をすることに使っている。

戦略的に重要な顧客はどの程度いるのか。そのうちの日本企業の割合は。

 正確な数は言えないが、売上高ベースで上位100社くらいのイメージだ。日本の比率も明確には言えないが、高いことは確かだ。我が社における日本の売り上げ規模は米国に次ぐ第2位だが、売上高ベースの成長率では少なくとも過去2年間は1位となっている。他の市場に比べ、極めて高い成長率を維持しており、非常に重要視している市場だ。私は年に4回程度は来日しており、今回の日本訪問では15~20社を訪れた。

 特に日本市場は他と異なり、顧客はサービスの内容だけでなく、サービス提供者側の誠意や良い関係で一緒に仕事ができるかどうかなどの関係性を重んじる。顧客にサービスを新たに使ってもらったり、長く利用し続けてもらうために、より良い関係を継続的に築くことが重要だと認識している。

日本での成長率が高いのはなぜか。その高い成長率はまだ続くと考えているか。

 日本では、大企業から中堅・中小企業まで、幅広い顧客がクラウドの価値を正しく理解してくれているのが特徴だ。

 日本の顧客はカスタマイズの要求が多く、パッケージソフトをあまり好まない点も我々のサービスが受け入れられた要因だと思う。アプリケーションとプラットフォームをアンバンドル化し、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)である「Force.com」の活用が日本では活発だ。顧客がForce.comを使い、アプリを早く自由に構築できる点を特に評価してくれている。

 今後も日本が成長率1位を維持し続けるかどうかの予測は開示していない。ただ、我が社の経営陣は頻繁に来日しており、データセンターを開設するなど大きな投資もし、今後も日本法人の人員を増やす計画だ。こうした事実を踏まえてもらえれば、我々が日本市場の今後の伸びをどう予測しているかはわかってもらえると思う。

日本では今後どのように顧客獲得や大口顧客の維持を図る戦略なのか。

 顧客獲得の加速に大きな影響を与えると期待しているのが、2011年中に予定する東京でのデータセンター開設だ。提携先のNTTコミュニケーションズから設備を借り、その中で一定の範囲を我々の管理下で所有権を持ち、責任を持ってサービスできる形にする。日本の顧客へ継続的にサービスを提供し続けるというコミットメントにもなる。

 大企業になるほど、セキュリティーの状況やシステムの信頼性確保の仕組みなどがクラウドの利用で重要になる。データセンターがどこにあるのかも当然気にする。ただ、セールスフォースの利用を検討する際にデータセンターが海外にあることを懸念する日本の顧客はいたが、きちんと説明を聞いてもらえれば、その点はあまり大きなハードルになっていなかったのが実状だ。

 それでも東京にデータセンターを開設するのは、今まで以上に見込み客の門戸を広げられると考えているからだ。一度も我々の説明や提案を聞かずに「海外にデータセンターがある」という点だけで、門前払いのように検討をやめていた顧客もこれまではいた。日本でのデータセンター開設は、こうした顧客の取り込みに大きく寄与すると考えている。