「かつてない規模でパートナー企業を組織し、クラウドへ邁進する」。マイクロソフトから企業向けに発せられるメッセージは、まさにクラウド一色だ。大企業向け事業を統括する平野氏と、パートナー向け事業を統括する五十嵐氏に、パートナー支援戦略や顧客企業にとっての利点を聞いた。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ、根本 浩之=ITpro



マイクロソフトは「ソフトウエアと同じく、クラウドサービスもパートナーを経由して顧客に届けることに変わりはない」と説明する。具体的には、どのような戦略を採るのか?

マイクロソフト 執行役 常務 エンタープライズビジネス担当 平野 拓也氏(左)、マイクロソフト 業務執行役員 エンタープライズパートナー営業統括本部 統括本部長 五十嵐光喜氏(右)

平野:現在はクラウド時代の事業モデルを模索している最中だ。今のところクラウドでは、提供者側の事業モデルも顧客企業の利用モデルも、まだ確立していない。

 例えば提供事業者にとっては、どういう提供形態が最適か、事業がいつ損益分岐点を超えるか。テクノロジーやソフトウエアをどう活用してクラウドサービスを構築するか、料金体系や構築支援のコンサルティングなど、あらゆる要素を検討する必要がある。これまでと同じで通用するものと変えなければならないところ、様々だ。我々だけでなくほかのベンダーも、考えながらどのようなモデルが最適であるかを模索しているはずだ。

五十嵐:ただしパートナー企業と協同で顧客へ製品やサービスを届けるというスタンスは、クラウドになっても変わらない。これは当社にとって、技術の種類に依存しない基本方針だ。

 我々自身が忘れてはならないのは、クラウドの利用者、顧客企業の視点で見なければならないことだ。「クラウドコンピューティングというパラダイムの変化を、自社でどう活用するのか」。顧客企業は、こう考えるはず。

 顧客企業のビジネス課題に対するITを使った解決策は、一通りではない。IT資産を所有したくない企業はパブリッククラウドを活用するだろうし、自社のデータセンターに自社グループ向けのクラウドを作って、強みとなるシステム基盤を外に出さない、という方針もあるだろう。これらのハイブリッド型もあり得る。

 こうしたクラウドの利用形態は、マイクロソフトだけでは支援できない。ユーザーを広範にカバーしたり、サービスを組み合わせた「ソリューション」を提供するには、やはりパートナー企業と手を組まなければならない。

平野:Windows Azureに関する富士通とのパートナーシップは、クラウド時代の変化を象徴している(本誌注:Windows Azureに基づくクラウド専用システムを共同開発する提携。関連記事)。両社が中核のテクノロジーを見せ合って、共同で新しいサービス基盤を作っている。これはクラウド時代に向けて変化するパートナーシップの、第一歩にすぎない。