リクルートは2010年11月1日付で、デジタルコンテンツ事業を展開する新会社「ニジボックス」を立ち上げた。ソーシャルメディアやスマートフォン向けサービスなどを企画・構築し、収益を上げていくという。新会社の代表を務める同社メディアテクノロジーラボ(MTL)の木村稔局長に、新会社設立の狙いなどを聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=日経コミュニケーション

リクルート メディアテクノロジーラボ(MTL)局長/ニジボックス代表取締役の木村 稔氏
リクルート メディアテクノロジーラボ(MTL)局長/ニジボックス代表取締役の木村 稔氏

新会社ニジボックスを立ち上げた背景を教えてください。

 2007年に設立したメディアテクノロジーラボ(MTL)は、新しいデジタル技術に関するR&D(研究開発)を進めています。これまでに30くらいのサービスを開発しました。

 そのなかには売り上げがすでに立っているサービスもあります。誤解を恐れずに言えば、R&Dとはいえ、従来から儲かることを念頭に置いて活動を進めてきました。将来的な発展が見えない分野に投資してきたつもりはありません。

 こうしたMTLの活動の延長で、サービスを事業化につなげていく。これが今回、新会社を設立した狙いです。

既存の活動をリクルート本体に置いたままでは事業化できなかったのでしょうか?

 これまでの取り組みを通じて、これからニジボックスが手がけるコンテンツ事業は、既存のリクルートのメディア事業とは異なることが分かってきました。例えば、既存メディアの販売対象は主に法人でした。ニジボックスが事業化するコンテンツ事業では、個人の消費者が主な対象となります。

 これまでのデジタルメディアを振り返ると、2000年からしばらくの間、サービスの主体は通信事業者による公式サービスでした。この市場は5000億円くらいになっているといわれています。

 その後、ソーシャルメディアが台頭してきました。この市場は1000億円から、数年後には2000億~3000億円になるといわれています。

 その次の波がスマートフォンです。ニジボックスは、スマートフォンに代表されるマルチデバイス環境にも積極的に対応していきます。

スマートフォン向けコンテンツでは、個人の開発者がいち早く動き始めています。法人としての今回の参入タイミングはどうお考えですか。

 スマートフォン向けビジネスでは、確かに個人が先行しました。当社のような法人が動くタイミングの判断材料の一つとして、課金プラットフォームの問題があります。通信事業者によるコンテンツ課金が始まることが大きいと考えています。今がベストで、2年後では遅いと思いました。

新会社では、どのようにコンテンツを企画・製作するのでしょうか。

 プランナーとエンジニアが二人1組となり、毎月1本ずつアプリを作ることを目指しています。あたかも工場のラインのように、一定品質のアプリを定期的に出していきます。

 品質を保証する目的に対しては、リクルートらしい目標管理が生きると思っています。初年度は150本くらいをサービス化し、5年後には100億円くらいの事業規模を目指します。現在は数億円の規模なので、チャレンジではあります。1個のヒット作で達成できる数字ではないので、全方位的に取り組みます。

注目している分野はありますか?

 Androidには確実に注力していきます。通信事業者、メーカー各社の製品ラインアップが増えている今、乗り出さざるを得ません。機種数もそうですが、台数としても間違いなく大きくなります。