2003年から約6年半、中国・大連市長として「大連ソフトウェアパーク」を世界でも有数のソフト開発拠点に育て上げたのは、現在、中国共産党遼寧省委員会常務委員を務める夏徳仁氏だ。同氏に、大連のソフト産業の現状と今後の見通しを聞いた。

(聞き手は山端 宏実=日経コンピュータ


中国共産党遼寧省委員会常務委員の夏徳仁氏
中国共産党遼寧省委員会常務委員の夏徳仁氏

大連はソフト開発の一大拠点としての地位を確固たるものにしています。今後、ソフト開発拠点として大連はどういう道を歩んでいくのでしょうか。

 まず大連のソフト産業の現状から説明しましょう。大連のソフト産業は約10年の成長を通じて、売上高が400億元(1円=12元換算で4800億円)を超えるまでになりました。すでに「大連ソフトウェアパーク」には900社のITベンダーが拠点を構え、その約45%に相当する400社が外資系ベンダーです。そのうちの42社は、米フォーチュン誌の売上高トップ500社に選出されています。エンジニアの数も8万人超となっており、世界でも有数のソフト開発拠点に成長しました。

 今後については、「大連ソフトウェアパーク第2期」を含む「旅順南路ソフトウェア産業ベルト」を世界一のソフト開発拠点にしたいと思っています。この目標を達成するため、2013年をメドに、旅順南路ソフトウェア産業ベルトの売上規模を2009年度比で2倍超の1000億元(1兆2000億円)、エンジニアを20万人にまで拡大させる計画です。

 産業発展の質の面から言うと、輸出から国内向け事業に軸足を移していきたいと考えています。その過程で、技術力を持ち、国際競争にも打ち勝てる地場のITベンダーを育てていきます。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)についても、日本語人材の豊富さを生かし、「大連ブランド」を作り上げます。

大連がソフト開発拠点として成功できた理由はどこにあるのでしょうか。

 理由は三つあります。一つは、地理的環境です。大連は北東アジアの中心に位置しており、特に日本は目と鼻の先です。ですから、日本向けのソフト開発をメインにした特色あるマーケットを形成できました。気候も日本に比較的近く、住みやすい土地であることも大きい。

 二つめは、教育水準の高さです。大連には大学が22あり、在校生は30万人を超えます。ITベンダーが設立したソフト工学専門の大学も6つあります。代表例は、中国のITサービス大手の東軟集団(Neusoft)が設立した「東軟情報技術学院」です。

 三つめは、大連が一貫して世界に目を向けてきたところにあります。最近は、大連市がミッションを組み、私が団長として日本や米国を訪れ、ソフト開発拠点としての大連の魅力を世界に向けて発信しています。こうした施策を打ち続けてきたからこそ、大連は世界でも有数のソフト開発拠点に成長できたわけです。

日本への要望はありますか。

 これまで、大連に拠点を設立する日系企業の大半は製造業だったわけですが、これからはソフト産業をメインにしていきたいと考えています。現在、大連市に拠点を持つ日系企業は約3000社ありますが、その大半が製造業です。伝統的な製造業だけでなく、サービス産業、特にソフト開発を手がける日系企業の大連進出を積極的に支援していきたい。日系企業には、我々の優遇政策を積極的に活用し、研究開発センターやバックオフィスをすべて大連に設置していただきたい。