主力製品「vSphere」のロードマップが知りたい。
vSphereを2010年中にアップグレードする計画があります。そこで特に力を入れているのが、さらなるスケーラビリティーの向上です。より多くのアプリケーションを管理できるようにしたり、パフォーマンスを引き上げたりします。
システムの自動化を推進するための機能も加えるつもりです。
自動化は多くの領域をカバーしています。我々はこれまでも、インフラ運用管理の自動化に取り組んできました。動的にリソースを配分する「DRS(Distributed Resource Scheduler)」や仮想マシンの移動機能「VMotion」、省電力のための「DPM(Distributed Power Management )」などがそれに当たります。
プロビジョニング(各種リソースの配置作業の自動化)も自動化における重要な一面です。我々は、特にアプリケーションのプロビジョニングをもっと簡単にしたいと考えています。
さらに、プライベートクラウドの構築に必要な機能をvSphereに加えるつもりです。仮想化レイヤーの上に位置する機能になります。課金管理のためのチャージバックやセルフサービスポータルなど、サービスプロバイダーにとって必要になる機能を2010年中に出す予定です。
ITをサービスとして提供する「IT as a Service」というのが我々の掲げるコンセプトです。プライベートクラウド向けの機能を充実させることで、このコンセプトの実現に近づくことができると考えています。
シスコ、EMC以外とも組む
昨年、Javaフレームワークを持つ米スプリングソースの買収を完了。今年1月には、メール・コラボレーションソフトのZimbraを米ヤフーから買収すると発表しました。狙いはどこにありますか。

Spring Frameworkは、世界中のJava開発者が利用しているアプリケーションフレームワークです。VMwareで構築したクラウドの上にフレームワークを敷くことで、新たなアプリケーションを簡単にデプロイ(配置)することが可能になります。フレームワーク上のアプリケーションに対して、クラウド側からキャパシティーをオンデマンドで拡張できるようになることもメリットです。
Zimbraについては、仮想アプライアンスという考えを広めていきます。アプリケーションを仮想マシンと一緒にまとめることで、いろいろな解決策をセットにして提供できるようになるのです。Zimbraの獲得により、そうしたセットを作るためのベースが手に入る。アプリケーションベンダーは仮想アプライアンスを利用することで、彼らの顧客に対して解決策を提供しやすくなります。
現在シスコ、EMCと「Virtual Computing Environment(VCE)連合」を組んで、仮想データセンターの構築に向けて、サーバーとネットワーク、ストレージを併せた基盤を提供しています。ほかのアライアンスはあり得るのでしょうか。
答えはイエスです。シスコとEMC以外と組まないというわけではありません。我々は幅広いパートナーと協業していきたいと考えています。実際、提携相手は増えています。例えば最近では、ストレージ層で米ネットアップとの協業を発表しました。ストレージベンダーとネットワークベンダーと広範なエコシステムを築き、緊密に協業していくことが我々の戦略です。協業を通じて、ストレージとネットワーク、コンピュータ処理をうまくつないでいくことが狙いです。
あらためて、仮想化技術が情報システムに与えるインパクトは何だと思いますか。
我々が仮想化でやろうとしているのは、単にハードウエアの利用効率を上げようということではありません。自動化を通じて管理能力を向上させることが目的です。例えばVMotionによるアプリケーションの移動は、ハードウエアの使用率を最適化するだけでなく、一定のサービスレベルを保証するために必要です。
プロビジョニング機能を組み合わせれば、より速く自動化のゴールに近づけるようになります。そのゴールとは、人の手で管理する必要がないシンプルなレイヤーを実現することです。そこではすべてが自律的に動きます。
ポール・マリッツ 氏
(聞き手は、森山 徹=日経コンピュータ)