The Linux Foundation Japanは2010年9月、国際技術カンファレンスイベントLinuxCon Japanを開催する。LinuxCon Japanの発表者は公募するが、発表資料だけでなくスピーチもすべて英語とすることが義務付られている。The Linux Foundation ジャパンディレクタ 福安徳晃氏にLinuxConの狙いを聞いた。(聞き手は高橋 信頼=ITpro)

2010年9月に開催するイベントLinuxCon Japanの発表者を募集していますが、すべて英語で、という厳しい条件です。

The Linux Foundation ジャパンディレクタ 福安徳晃氏

 LinuxCon Japanは、2009年10月に開催した国際技術シンポジウム「Japan Linux Symposium」(関連記事)の第2回にあたります。Japan Linux SymposiumはThe Linux FoundationのフェローであるLinus Torvalds氏ら多くの主要なLinuxカーネル開発者も来日し、講演を行いました。

 名称を変更したのは、The Linux Foundationが2009年からアメリカでカンファレンスLinuxConを開始したことがあります。LinuxConは北米のLinuxカンファレンスであり、その日本版、アジア版という位置付けを明確にするためです。今回も世界から多くのスピーカーが来日する予定です。

 すべて英語で、という制限は確かに厳しいと思います。でも、日本の技術者を世界の舞台に立たせたいという思いからです。LinuxConでは、スピーカーも聴衆も世界から招きます。英語は避けては通れません。なにより、Linuxコミュニティの標準語は英語です。

 ただし英語はあくまで道具ですから、下手でもかまいません。大事なのは発表する内容と伝えたいという気持ちです。無理にアメリカンな英語を話す必要はありません。胸を張って“ジャパニーズイングリッシュ”を話すべきだと思っています。

昨年のJapan Linux Symposiumは。

 昨年のJapan Linux Symposiummも、約60セッションありましたが、すべて英語で行いました。半分ほどが日本人発表者でした。英語は苦手で、という方もおられたようですが、それでも発表して、それが自信になった方がたくさんおられたとうかがっています。

 活気のある組織やコミュニティって、新しい人がどんどん入ってくるようなものでなければならないと考えています。特に、若い人にLinux開発コミュニティに入ってきてほしい。

 オープンソースは、企業の壁や国境のない世界です。たとえ企業で業務としてLinuxを開発していても、それはグローバルな開発コミュニティ活動の一部なのです。ぜひ勇気を出して、このステージに登ってほしい。

 私自身、米国に留学した際、当初はどうしても壁のようなものを感じていました。それでとにかく英語が下手なことを気にしないようにして、体育会系野球部に入手したり、とにかく意図的に四六時中米国人とともに過ごすようにしました。そのうちに当初感じていた距離感はなくなり、気圧されたり、構えてしまったりすることがなくなりました。

 日本企業の海外事業担当としてインドで現地法人を設立した際は、登記、銀行口座開設、オフィス探し、採用、営業を現地のパートナーとともにこなしました。インドのIT市場をメディアを通してではなく、自分の目で見たことで、インドが「自分の土俵」のように感じられるようになりました。

 オープンソースのコミュニティも、外から見ている限りでは少し遠い存在に感じるかもしれませんが、実際に飛び込んでみて、自分自身で体験することで、身近に感じられるようになると思います。コミュニティに参加して、グローバルに国境と企業の枠を超えた開発プロセスに関わり、その活動が認められるようになれば、キャリアと人生が大きく広がるはずです。LinuxCon Japanがそのきっかけ作りの場所となることを願っています。

The Linux Foundation ジャパンディレクタ
福安 徳晃(ふくやす のりあき)氏
日立製作所を経て2005年10月にターボリナックス入社、海外事業本部長として中国、インドなどの海外事業を統括。2006年4月からTurbolinux India社長、2008年1月からターボリナックスの子会社であるゼンドジャパンの代表取締役社長を務めた。2010年1月より現職。