ユーザーがtwitterで「電子レンジで魚を焼きたい」とつぶやくと、「『小林製薬 チンしてこんがり魚焼きパック』かも!?」と教えてくれる「コレカモ」(twitter IDは @korekamo)は、東急ハンズが3月に作ったtwitterのボット(自動回答プログラム)だ。東急ハンズと良品計画が5分単位で更新する店頭在庫情報も合わせて教えてくれる。コレカモを企画した長谷川秀樹氏は、「人間の会話に近いユーザーインタフェースが実現できた」と語る。twitterボットの開発意図などを聞いた。

IT物流企画部
長谷川秀樹氏
コレカモはお勧め商品と在庫情報を、どのようにユーザーに提供しているのですか?
コレカモはチームラボが開発したボットです。事前に、東急ハンズや良品計画が扱う全商品110万件のデータを、製品名だけでなくその製品説明文などを含めて分析しておき、お客さんの質問文に含まれる名詞に一番マッチしたデータを持つ商品を、お勧めとして回答しています。
特徴は、実際に使用している商品データ、販売管理データをそのまま使っていることでしょう。東急ハンズと良品計画は、ほぼ同じ販売管理システムを使っています。POS(販売時点情報管理)システムが集めたデータを、いったんテキストデータとしてファイルサーバーに書き出し、そのデータをUNIXのシェルコマンドを使って解析するというシステムです。このシステムで使うテキストデータを、コレカモではそのまま使っています(注:このようなシステム開発手法を良品計画などは「ユニケージ開発手法」と呼んでいる)。在庫情報は5分ごとに更新されているので、コレカモはほぼリアルタイムの店頭在庫情報を返答しています。
twitterボットを使って、お勧めの商品や店頭在庫の情報をユーザーに提供しようと考えたいきさつは?
ユーザーに対してオンデマンドで情報を提供するシステムのユーザーインタフェースとしては、キーワード検索や、ディレクトリ構造などが一般的です。しかし常々、これらは人間の会話のあり方とは違うと思っていました。ドラえもんのような、人間的なインタフェースを実現したいと思っていたのが、コレカモのようなtwitterボットを開発した第一の理由です。
理由はもう一つあります。以前から、「正確ではない答えを返すシステム」をユーザーに受け入れてもらいたいと思っていました。現在、東急ハンズが扱う商品アイテム数は100万点を超えます。顧客の求める商品を探し出すのは、年々難しくなっています。店頭の販売スタッフなら、自分の売り場の商品に関してかなり的確に答えられますが、たとえITを駆使しても、すべての商品の中から顧客が求める商品を100%正しく答えることは困難です。
コンピュータというとどうしても「必ず正しい答えを返すもの」という先入観があって、正確ではない曖昧な答えを許さない風潮があります。これを変えられればと思い、あたかも感情があるようなコレカモというボットを作り込みました。「昔ながらの商店街にある八百屋のオジさんと、会話をしながら買い物をする楽しさ」のようなものを、コンピュータを使うことで取り戻したかったのです。
システムの開発費はいくらほどかかりましたか?
システム全体の構築費用は2000万円です。経済産業省による「平成21年度『ITとサービスの融合による新市場創出促進事業(e空間実証事業二次公募)』」の委託事業として、3月まで実証実験という位置付けでサービスを提供してきました。4月以降もサービスは継続し、将来的にはコレカモの答えに東急ハンズ社員がツッコミを入れるような、コンピュータと人間が混合した受け答えなども実現して、顧客にとってカユイところに手が届くようなサービスを提供したいと考えています。