写真1●面白法人カヤックの企画部に所属する玉田 雄以(ゆい)氏
写真1●面白法人カヤックの企画部に所属する玉田 雄以(ゆい)氏

 絵の面積によって価格が決まる絵画販売サイト「ART-Meter」など,特徴的なサイトやサービスを開発・運営する面白法人カヤック。ブレーンストーミングを支援する「代表ブレスト派遣」を顧客向けに提供するほど,社の文化としてアイデアの創出を重視している。

 同社で新しいサイトやサービスを企画・開発する「ラボ事業」では,毎日夕方に約1時間,アイデアを話し合うブレーンストーミングを実施しているという。会議主催者の一人である玉田雄以(ゆい)氏に,ブレーンストーミングの秘訣を聞いた。

(聞き手は高下 義弘=日経SYSTEMS

なぜ毎日,ブレーンストーミング(ブレスト)会議を実施しているのですか。

 ラボ事業では2007年には77個,2008年には88個のサイトやサービスを企画・実装するという目標を掲げ,実際にリリースしてきました。今年2009年は99個が目標で,大きなチャレンジです。

 この数字を達成するには,毎日ブレスト会議を実施して,限られた時間の中でアイデアを出し続ける必要があります。

ブレスト会議はどのように進行しているのですか。

 ブレストは毎日夕方,中心となるメンバー10人程度が集まって,5人ずつのグループに分かれて始めます。それぞれのグループが自由にアイデアを出し合っていきます。メンバーが気にかけているWeb技術やビジネスのアイデアを紹介しながら膨らませていく,というのが通常のやり方です。

上手なブレストの秘訣は何でしょうか。

 発言の垣根を低くすることです。あまり発言しない人がいた場合,司会者やリーダー・クラスのメンバーが,「こういうのもあり得ますよね」とあえて誰でも思いつくようなアイデアを言ってみるのです。そうすると,発言に躊躇(ちゅうちょ)していた人も「その程度のアイデアでも発言していいのだ」と安心して発言できるようになります。

 司会者やリーダーだと,「自分から素晴らしいアイデアを出さなければ」と思うかもしれません。ありふれたアイデアをわざわざ提示することに抵抗感もあるでしょう。

 ですが,アイデアは量が出てきて初めて質の議論ができます。そもそも,発言で出てきたアイデアの質が高いか低いかは,その時点では判断できないことがほとんどです。だからこそ,司会者やリーダーには,量を確保するための場づくりを追求する姿勢が求められます。

 発言に消極的な参加者が「こんなアイデアで良いのだろうか」とアイデアを出したら,実際にはとても良いものだった,ということは少なくありません。実サービスに大きく採り入れられたというケースも多くあります。

ブレストを経て作ったサイトやサービスは,事業にどう貢献していますか。

 ラボ事業のブレストで作ったサイトやサービスは,収益を求められているわけではありません。とはいえ,それらをほぼそのままの形で事業化させるケースも多くあります。

 例えば「顔エモジール」はロフトのキャンペーン商材として採用されました。顔エモジールは携帯電話のカメラ機能で人の写真を撮ると,それを自動的にメール文中に挿入できる顔文字に変換するサービスです。

 たくさんのサイトやサービスをリリースすることは,カヤックの特徴や得意分野を知ってもらえる機会が増えるという効果もあります。実際,サイトを見た企業から「カヤックと一緒に仕事をしてみたい」と声をかけていただく機会が増えています。

ブレスト会議を毎日続けるのは負担ではないでしょうか。

 大きな負担にはなっていません。私も含めて,参加者がブレスト会議に参加することのメリットを実感しているからだと思います。毎日ブレストをしていると,自分の思考が変わってくるのがよく分かります。

 習慣化していれば,良いアイデアが短時間で出る「アイデア体質」に変われます。帰宅時,電車で一緒になった同僚とブレストする,ということもよくあります。また,アイデアが出なくて気分が沈む,ということも少なくなってきたと思います。