セキュリティベンダーである英ソフォスの日本法人は、首都圏の営業・サポート拠点として2009年6月に東京サテライトオフィス 渋谷を開設した。日本法人の堀昭一社長は外資系ソフト会社の社長を務めた経験を生かして日本法人の売り上げ拡大を図る。堀社長に国内でのセキュリティビジネスや営業力強化の取り組みについて聞いた。

(聞き手は中井 奨=日経コンピュータ

ソフォス日本法人の堀昭一社長
ソフォス日本法人の堀昭一社長

厳しい経済状況が続くが、セキュリティ関連事業への影響は。

 商品には経済状況が良ければ売れるものと、経済状況が悪くても水や食料のように必ず必要とされるものの2種類に分けられる。セキュリティ製品はどちらかと言えば、後者のように景気動向にかかわらず必要とされるもの。情報を盗み取って利益を得ようとする者も増えるので、セキュリティはより必要とされている。

 実際に当社のセキュリティ事業は二けた成長を続けている。国内の売り上げのうち官公庁向けが40%、大学向けで15%を占めている。特に大学は学生により良い環境で勉強してもらうために、情報基盤を整えようという傾向が見られる。

ソフォスの強みは何か。

 ソフトウエアの管理が容易で、アップデートも再起動なしにできることだ。他社のソフトを利用している企業がソフォスの製品を試すと「これは簡単に使える」と驚く。シンプルかつ軽くするという開発ポリシーは、創業以来続けている。

堀社長は、SAS Institute Japanやノベルなど外資系のソフトベンダーの社長を務めてきた。ソフォスのようなセキュリティ系とエンタープライズ系のソフトのビジネスの違いは。

 セキュリティソフトと他のエンタープライズ系ソフトとの間には大きな違いがある。お客様はエンタープライズ系ソフトを一度導入するとずっと使い続け、何年も同じ状態であることを望む。一方、セキュリティソフトに対しては常に最新の状態を求める傾向がある。

 もう一つの違いは、エンタープライズ系のソフトは海外で開発されたとしても主に国内の問題に対応するのが重要とされるが、セキュリティソフトは国内よりもむしろ海外の問題に対応しなければならないこと。常に海外からの攻撃に対して防御する必要があるからだ。

日本法人の事業目標は。

 今後3年間で売上高を4倍にする計画を立てている。現在の日本法人の売上高は全世界の5%前後だが、日本のITインフラの状況を考えれば、これを15~20%に伸ばせる余地は十分にあると考えている。

目標達成のために何をするのか。

 まずは営業強化に取り組んでいる。これまでの営業スタイルは、ソフォスの製品の機能や特徴を説明してきたがこれを改める。お客様にはまず、「情報システムのセキュリティでお困りのことはありませんか」とか「セキュリティソフトのアップグレード時にシステムを再起動していませんか」などと現状の課題を聞き出す。その上で課題にヒットすれば、ソフォスの製品を活用した解決手段を提案する。我々が提案する解決手段にお客様が興味を持ってから初めてソフトについて説明する。お客様はソフトで何ができるのか、というよりも困っていることをどう解決するかを知りたがっている。

 こうした課題解決型の営業スタイルをソフォスの社員だけでなく、販売パートナーにも定着させる考えだ。

パートナーとの関係は。

 パートナーと一緒に目標を設定し、目標達成に応じて売り上げと利益が還元されるような支援プログラムにしている。パートナーのトップとも頻繁に話し合いの場を持ってコミュニケーションを密にしている。パートナーとはソフォス製品の販売に専念するスタッフを置いてもらうことで合意している。

 当社にはお客様のニーズを聞き出す“ハイタッチ営業”グループがある。ハイタッチ営業担当の中には、目標200%の売り上げを連続して達成したトップセールスも含まれている。パートナーからハイタッチ営業の担当者に同行営業してほしいという要望もあり、それに応えている。