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インタビュー

場の空気を可視化する「ソーシャルAR(拡張現実)」に大きな可能性

日本技芸 リサーチャー 濱野智史氏

2009/02/10 日経コミュニケーション

 拡張現実(AR)を使うどのようなアプリケーションやビジネスが考えられるのか。Webのコミュニティやサービスに詳しい日本技芸の濱野智史リサーチャーは「ソーシャルAR」に注目する。「mixi」のようなARサービスに大きな将来性があるという。

(聞き手は,武部 健一=日経コミュニケーション


昨年頃から拡張現実(AR=Augmented Reality)が話題です。

日本技芸の濱野智史リサーチャー
[画像のクリックで拡大表示]

 現象として面白いなと思うのは,ニコニコ動画でCGM(Consumer Generated Media)的に技術開発が進んでいることですね。例えば「ARToolKit」という技術シーズがあって,それがフリーで公開されて,ニコニコ動画上でそのツールを用いて製作された作品が公開されたり,オープンソース的にハックされていくという流れがあって,その現象自体が非常に面白い。

 これまで,研究所や大学の最新の研究成果に触れる機会というのは,どうしても限られてしまっていたと思うんです。これに対し,ニコニコ動画の「ニコニコ技術部」の作品というのは,技術開発の成果やプロセスそのものがパフォーマンスとして成立している。これは従来にはない科学・技術と社会の間のコミュニケーションのあり方だと思うんですよ。

 私の知る限り,このような現象は海外ではあまり見られません。ニコニコ動画ならでは,日本ならではの現象でしょう。ARを用いた「電脳フィギュア」のような製品も出てきていて,日本のオタク文化の延長線上としても受け入れられつつある。こうした日本特有のサブカルチャーと結び付くことで,今後も日本特有のARのイノベーションや発明が生まれてくる可能性は十分にあると思います。

mixiのようなARに将来性あり

ARは今後どのように展開していくと見ていますか。

 現状のARの動向には一つだけ不満があります。ARのいろいろなアプリケーションを見ていて思うのは,今のところ「対-モノ」的な使い方の提案にとどまっている,ということです。「対-モノ」というのは,リアルのモノの世界に情報なりメタデータなりCGなりを投射するということですね。「Wikitude」や「Enkin」,電脳フィギュアなど,いずれもそうです。

 でも,ARは「対-モノ」ではなくて「間-ヒト」,つまり人と人の間のコミュニケーションに使うほうが絶対に面白いし,社会的な影響力も絶大だと思うんです。

 例えば,会議中に“空気を読むAR”があれば非常に面白い。目線が何回こちらに来たかとか,出席者が何回笑ったかをカウントすることで,会議中の場の「空気」を可視化できる。他人がどの方向を向いているかは6軸センサー付きのデバイスをみんなが持つようになれば検出できるし,最近のデジタルカメラが備えているスマイル認識機能を使えば,“笑い”も検知できる。いわば,mixiの「足あと」機能のようなものですね。仮に名前を付けるとしたら,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)ならぬ「ソーシャルAR」といったところでしょうか。

 「ソーシャルAR」はなぜ重要なのか。他の理由もあります。例えばARを実現するにあたっては,QRコードやICタグのようなマーカー(識別子)が重要になるわけですが,実は人間の場合は顔がそのままマーカーの役割を果たしてしまう。やはり最近のデジタルカメラ製品のなかに,個人の顔を識別できる製品が登場しているので,個々人の顔をそのままマーカーとして用いることが将来的には可能になるでしょう。

 そうなると,例えばパーティーなり合コンなりオフ会で,カメラで顔をかざすだけで誰と誰がどのような人間関係にあるのかが瞬時に分かるようになったりする。さらに,自分の席からは見えない人の細かい仕草や表情も検知できるようになったりする。つまり「社交スキル」を拡張するためのツールとして,「ソーシャルAR」は非常に強力なんですね。空気を読めない「KY」な人であっても,こうしたツールがあれば,場の空気というメタデータをなんなく読み取ることができるようになるかもしれない。

 もともと日本では,情報技術は単なる“コミュニケーション・ツール”ではなく“人間関係調整ツール”として普及する傾向にあります。例えば携帯電話。これは必ずしも「どこでも誰とでも会話できる」点がウケたわけではなかった。むしろ「電話帳」と「ナンバーディスプレイ機能」(番号通知機能)によって,相手次第で電話を取るかどうかを受け手が判別できるようになった点が大いにウケたんですね。またSNSのmixiであれば,「足あと」なりのログ機能を通じて,「この人とは最近疎遠だな」とか「やたらと接近してきていてキモチ悪いな」というように,お互いの人間関係の距離感を把握するために使われている。こうした歴史を踏まえると,人間関係の調整やコミュニケーション・スキルを強化できるARアプリケーションが登場したとき,一気に普及する可能性がある。実際,mixiとARは非常に相性が良いでしょうね。

負の副産物もありそうですね。

 もちろん,「ソーシャルAR」が現実のものになれば,相当な悪影響や混乱が懸念されます。ARで罵詈雑言のタグ付けをする,といったことができてしまうからです。小学校なんかで,「バカ」とか紙に書いてこっそりと背中に貼り付けるいたずらがありましたよね。いわば「AR炎上」とでもいうべき現象が大規模に発生する危険性があるわけです。また,顔がマーカーとして本格的に使われるとなれば,プライバシーの問題はいよいよ深刻になるでしょう。おちおち顔を出して外を歩けなくなる時代が来るかもしれない。今後,ARのビジネスが発展する中で,こういった事態にいまから備えておく必要があると考えます。

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